ハッカーと画家 コンピュータ時代の創造者たち

naoya_t:ポール・グレアムのエッセイと和訳一覧

無料で読めるポール・グレアムの「ハッカーと画家」+αの日本語訳のみのまとめ

大成功ベンチャーの創業者にして天才プログラマの著者が語る、これからの時代を見通す考え方と創造のセンス

本書の著者Paul Grahamは、LISPプログラミングの達人であると同時に、後のYahoo!Storeとなるソフトウェアを作り、ベンチャー創業者として大きな成功を収めたことで知られる。本書でGrahamは、コンピュータが大きな役割を担う時代において、いかに発想を広げ、美しいものを設計し作り上げるかを、さまざまな切り口から大胆に考察している。インターネット上で大きな話題となったエッセイを書籍化。
Hackers and Painters: Big Ideas from Computer Age (O’Reilly Media, 2004)の日本語版。

 

『一般報道では、「ハッカー」とはコンピュータに侵入する人物のことを指す。プログラマの間では、その言葉は優れたプログラマを指す。この2つの意味は実はつながっている。プログラマにとって「ハッカー」とは、文字通りその道の達人であることを意味しているんだ。つまり、コンピュータに、良いことであれ悪いことであれ、自分のやりたいことをやらせることができる者、ということだ。』

コンピュータに囲まれ、インターネットで何もかもが置き換えられようとしている現代では、インターネットに住み、コンピュータを自在に操るハッカーは、ときには魔法のように世界を次の世代へと進めるウィザードとして、またときには挑戦的で反社会的な問題児として扱われる。2つの極端な扱いはともに、ハッカーが「ルールに従順でない」ことから来ている。誰もが当たり前と思っている「ルール」を曲げることで、良くも悪くも普通ではない結果を得ることができる技能の持ち主、それがハッカーだ。

ハッカーの並外れた知識と技能は、普段はインターネットやコンピュータの向こう側に隠れていて見えない。ハッカーは同時にオタク(nerd)であることが多く、概して社交的ではない。その技能で、反社会的活動に関わったときに初めて外の世界からその存在が公になるために、ハッカーはコンピュータに悪事を働くものとして定義されてしまった。著者はこの日本語版のための書き下ろしを含む17のエッセイを通して、ハッカーの頭の中に広がる世界を一般社会に見せようとしている。コンピュータ・ソフトウェアのプログラミングに関わる深い問題と、貧富の差や富の創造、それにものづくりのセンスのようなやわらかい題材を通して、コンピュータ時代の革新を担うハッカーたちのものの考え方に触れることができる。

『オタク野郎』たちを使いこなすのは難しい。とりわけ、ルールにとらわれ、リスクをとって前に進むことのできない『髪のとんがった上司』には、彼らをうまく扱うのは至難の業だ。本書は、ハッカーたちが考えていることをハッカーでない人たちにもわかる言葉で解説してくれる。『過去30年ほどの間に裕福になった人々の多くがプログラマであった』ことを考えれば、彼らが今何を考えているのか知ることは、無駄でないどころか必須科目だとすらいえるだろう。また、今現在「オタク(nerd)」のレッテルを貼られて苦しんでいる若者たちにとっては、周囲に広がる広大で可能性に満ちた世界を知ることができる、社会見学のような存在でもある。(吉松史彰)

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