2021年度第1学期単位認定試験_発達科学の先人たち(’16)
発達科学の先人たち(’16)の2021年度第1学期単位認定試験が、WAKABAにありましたので、2021年度第2学期単位認定試験がはじまる直前にしてみました。
問題を解きおわって、回答を見てみると、「当科目の解答そのものは公表しない。」とのことでした。
「えっっーー」でした。
問 1 発達と発達科学に関する次の1~4のうち,正しいものを一つ選べ。
1 発達科学は,基本的に生物全般の発達現象をその研究対象としている。
→×人間の発達に関して科学的な分析・考察を行う学問領域である。
2 人は周囲の環境によって成熟するものだ,というのが「成熟説」に基づく発達観である。
→×「すべて遺伝的に決定されている資質が時間を追って実現する。」(成熟説)
3 発達には先天的要因(生物学的要因)と後天的要因(環境と学習)がともに関わっている。
4 人の発達は成人することで完了するため,中高年の発達というのは矛盾した概念である。
→×成人後の発達や中高年における発達、さらには、一生を通じての障害発達という視点も充分可能となる。
問1:発達科学は基本的に生涯を通じた人の発達に関する科学であり、その根底には、先天
的要素と後天的要素をともに考察の対象とするという姿勢が存在している。→正解は3か。
問 2 アリストテレスの「心」のとらえ方を説明した次の1~4のうち,誤っているものを一つ選
べ。
1 心に関する研究に第一級の地位を与えていた。→◯
2 心とは何かを探究するには,まず本質を見極め,それを分類,定義することが重要だと考えた。→◯
3 心は生きるための原理だと考えた。→◯
4 心をソーマ(物体)の質料(ヒュレー)と考えた。
問2:アリストテレスは心(プシュケー)を身体(ソーマ)の形相(エイドス)、つまり表出形態であると考え、質的なもの(ヒュレー)とは見なさなかった。→正解は4か。
問 3 貝原益軒とその著『和俗童子訓』について述べた次の1~4のうち,誤っているものを一つ
選べ。
1 貝原益軒は朱子学を深く学んでいたが,後年は実際の行動を重んじる陽明学にも理解を示した。→◯
2 『和俗童子訓』は,武士階層だけでなく農工商階級の子弟に対する教育にも言及している。→◯
3 貝原益軒は在野の一儒学者として私塾を開き,生涯そこで人々に朱子学を講じ続けた。
4 『和俗童子訓』で示された随年教法は,貝原益軒の教育論の際だった特徴の一つである。→◯
問3:貝原益軒は、その人生の最も長い期間、福岡黒田藩に出仕していた。→正解は3か。
問 4 ダーウィンの進化論およびその著作『人及び動物の表情について』に関して説明した次の1~4のうち,正しいものを一つ選べ。
1 ダーウィンは,ビーグル号での研究旅行から帰るとすぐに進化論を発表した。→×
2 ダーウィンは,特定の心の状態に対して,決まった感情(動作)が表出されるのは,進化の歴史のなかで,その感情表出が何らかの機能的価値を持っていたからだと考えた。
3 ダーウィンは,あらゆる感情表出は,「有用な連合性習慣の原理」と「反対の原理」の二つで説明できると考えた。
→×「有用な連合性習慣の原理」と「反対の原理」と「神経系の直接作用の原理」の3つの一般原則
4 ダーウィンは,人間の表情は特殊であって,他の動物に適用される原理だけで説明することには無理があると考えた。
→×「種々の情緒や感覚を生じるあたって、人間や下等動物の不随意的に使用する多くの表情及び身振りを説明する。」3つの一般原理を導き出す。
問4:ダーウィンは進化論の公表に慎重であった。また、例えば「笑う」という動作がヒトという種で決まって見られるのは単なる偶然ではなく、その動作が進化の過程で有用な何らかの機能を持っていたから残ったのだと考えた。→正解は2か。
問 5 ヴントとその研究業績について述べた次の1~4のうち,正しいものを一つ選べ。
1 心理学が哲学から独立した学問となる上で,実験という方法の採用は重要だった。
2 ヴントが行った実験とは,主に記憶の実験であった。
→×自分の精神の内面を観察する内観という方法を用いて意識を観察・分析し、意識の要素と、その構成の法則を明らかにすることであった。
3 ヴントの区分による英雄時代の英雄とは,戦争の英雄のことを指す。
→×戦争などの英雄のみではなく、都市あるいは国家の創設者、宗教の創始者として精神界で活躍した人々も含まれている。
4 「人類」時代の人間は,原始人より進化しているとヴントは言う。
→×「人類」時代の人間が,原始時代の人間より、人間性の点で向上し、進化したとは、考えていない。
問5:ヴントは心理的な実験にこだわったが、それは、それによって心理学が哲学に対する独自性を主張できると考えたためであった。→正解は1か。
問 6 デュルケムの『道徳教育論』における教育観について述べた次の1~4のうち,正しいもの
を一つ選べ。
1 教育は絶対的真理や普遍的価値を子どもたちに伝える手段である。
→×教育的価値や教育の達成目的は普遍的なものではなく相対的なものだった。
2 子どもたちが持っている自然に発達する力を歪めず素直に伸ばすのが本来の教育である。
→×
3 現実社会の支配的な価値や規範を子どもたちに内面化することが教育の重要な意義である。
4 子どもたちの能力を最大限に伸ばすことでよりよい社会的成功に導くことが教育の目的である。
→×
問6:デュルケムによれば、教育の目的は絶対的真理を子どもたちに教え込むことでも、内的な潜在能力を最大限に伸ばすことでもなく、現実社会の価値や規範の体系を子どもたちの内部に形成することであった。→正解は3か。
問 7 シュタイナーとその業績について述べた次の1~4のうち,正しいものを一つ選べ。
1 シュタイナーは,何よりもルソーの正統な継承者であることを自認していた。
2 シュタイナーの教育実践は,19 世紀末に始まる新教育の潮流に属している。
3 シュタイナーの人智学(アントロポゾフィー)の原理は,長期間にわたり子どもたちを観察した結果,帰納的に見出されたものである。
4 『子どもの教育』では,子どもたちが手本を模倣することを単なるモノマネとして排除している。
問7:シュタイナーの教育実践は、シュタイナー自身の想いはともかく、時期的にも 19 世紀末以来の新教育の潮流に区分けされている。→正解は2か。
問 8 モンテッソーリとその教育法に関する業績について述べた次の1~4のうち,不適切なものを一つ選べ。
1 モンテッソーリが自らの教育法を考案するきっかけとなったのは,知的障害児の行動観察であった。
2 学校における教育実践で現在広く用いられる「ティーム・ティーチング」や「オープン・クラス」,「無学年学級」なども,そのオリジナルはモンテッソーリ教育法にある。
3 アメリカにおけるモンテッソーリ教育法は,早期才能教育の方法としても採用されてきた。
4 『子どもの発見』では,子どもを完全に自由にさせることが目指されるため,人の話を静かに聞く態度や秩序ある行動などには全く価値が置かれていない。
問8:モンテッソーリの学校では、何よりもまず静かに話を聞く態度が重要視された。→正解は4か。
問 9 バートレットの研究業績に関する次の1~4のうち,正しいものを一つ選べ。
1 バートレットが実験で主に用いたのは,記憶の再生であった。
2 バートレットは,一般に再生は再認より容易であると考えた。
3 バートレットは,人が記憶を再生する際,内容はかなり変えてしまっても固有名詞は保たれることを見出した。
4 バートレットが用いた系列再生法とは,物語の順番を思い出すというものであった。
問9:バートレットの研究関心は、人間の「記憶」や「想起(思い出すこと)」のメカニズムに向けられていたが、その研究では何よりも記憶の再生が実験テーマとされた。→正解は1か。
問 10 ピアジェの研究業績に関する次の1~4のうち,誤っているものを一つ選べ。
1 ピアジェは,知能テストに対して 3,4 歳の幼い子どもが独特の誤りを犯すことに興味を持った。
2 ピアジェは,乳児や幼児の認知を,思春期の子どもや大人の認知とは質的に異なるものであると考えた。
3 認知発達が形式的操作期の段階に至るのは成人してからであるとピアジェは考えた。
4 誕生直後の乳児は生まれつきの反射と本能的行動とからなる認知構造を持っているとピアジェは指摘した。
問 10:ピアジェによれば、すでに 11 歳の段階でこどもは形式的、抽象的な概念操作ができるようになるとされる。→正解は3か。
問 11 ハーロウの著作『愛のなりたち』の中で紹介される研究や理論を説明した次の1~4のうち,正しいものを一つ選べ。
1 愛情という現象を客観的に研究することは不可能なため,心理学者は愛情の研究などすべきではないと述べている。
2 恐れや怒りに伴って生じる攻撃行動は,愛情とは何の関連もないものであり,個人の社会的発達にも無用な行動だと述べている。
3 サルを対象とした研究によれば,仲間どうしでの適切な遊びがなされないまま成長すると,異性愛にも悪影響が生じることが明らかにされている。
4 サルと人間では,同じ霊長類といえども愛情の形態はまったく異なるため,サルを研究したところで,人間の愛情については何もわからないと述べている。
問 11:愛情の成り立ちについて積極的に考察を進めたハーロウは、サルを用いた実験によって、幼体期の仲間遊びの欠如が適切な異性関係の形成不全につながることを示した。→正解は3か。
問 12 アリエスとその著作について述べた次の1~4のうち,不適切なものを一つ選べ。
1 アリエスは,アナール学派と呼ばれる歴史学研究グループに属していた。
2 アリエスは,子どもらしい行動や態度を身につけさせるために,学校と家庭が協力して子どもの教育に当たるべきだと主張する。
3 『〈子供〉の誕生 アンシァン・レジーム期の子供と家族生活』では,日本の江戸時代初期に当たる 17,18 世紀ころまで,ヨーロッパ社会には独立した子ども期の概念が成立していなかったと指摘されている。
4 アリエスは,子ども期や青年期の成立に学校や軍隊が強くかかわっていたと指摘している。
問 12:アリエスの著作『<子供>の誕生・・・』は、適切な子どもの教育へのアドバイスや主張を示した本ではなく、歴史的に見た社会的存在としての子どもの位置付けを論じたものである。→正解は3か。
問 13 清水義弘とその著書『試験』について述べた次の1~4のうち,正しいものを一つ選べ。
1 清水は,当時の新たな潮流であった新教育運動の日本における有力な紹介者の一人であった。
2 清水は,教育に関わる現象を個人的事柄の集積ではなく,一定の背景や傾向を持った社会的事象ととらえていた。
3 清水は『試験』において,当時の「試験地獄」の要因として保守党政権の教育政策をあげ,政治改革によってそうした状況を改善すべきだと主張した。
4 清水は『試験』の結論として,教育をただすためには一時点の限られた能力の測定結果だけで将来が決まってしまう試験制度の廃止を訴えている。
問 13:デュルケムの社会学から出発した教育社会学者清水義弘の著作『試験』では、教育が一貫して個人的営為としてではなく社会的事象と捉えられている。→正解は2か。
問 14 土居健郎の甘え理論について述べた次の1~4のうち,不適切なものを一つ選べ。
1 甘えには健康で素直な甘えと自己愛的で屈折した甘えがある。
2 甘え概念は,カルチャーショックの体験が契機になった。
3 土居は,「自分」の意識の発生に「甘え」が主要な役割を演じていると説いている。
4 土居が米国で学んだ精神分析は対象関係論である。
問 14:土居健郎がアメリカで学んだのは、英国流の対象関係論ではなく、自我心理学であった。→正解は4か。
問 15 現代の心理学をめぐる状況に関する次の1~4のうち,正しいものを一つ選べ。
1 心理学は,様々な先端的な科学の影響を受けつつ発展してきている。
2 行動主義心理学は,アメリカにおける民主主義を背景に,自由意志の尊重をその基本としている。
3 心理学はその学問としての独立性を重んじているので,他の学問分野と融合することはない。
4 現代のコンピュータ科学は,人間の脳の働きを完全に再現できるところまで進んでいる。
問 15:人は自由意思ではなく条件付けにより意思決定を行うという行動主義心理学は、 1950年代にアメリカを中心として広まったが、その後は関連する他の学問分野の影響を強く受けながら、心理学も非常に多様な領域での発展を遂げている。→正解は1か。