「大退職」した人の半分は仕事に戻ってこない…ゴールドマン・サックスの調査で
- 新型コロナウイルスのパンデミックからの回復に伴い、労働力不足が何カ月も続いている。
- ゴールドマン・サックスの調査によると、パンデミックの間に500万人分の労働力を失った。
- そのうち約250万人は退職後に仕事に戻らないため、労働力に大きな穴が空いたままになっている。
アメリカ中が人手不足だという報道はすぐには終わらないかもしれない。なぜならば大量の定年退職者によって労働力を失ってしまい、その多くは仕事に戻らないからだ。
ゴールドマン・サックス(Goldman Sachs)のジャン・ハッチウス(Jan Hatzius)率いる研究者チームが2021年11月12日に発表したレポートによると、労働力人口から離脱した人、つまり仕事をしていないか、積極的に仕事を探していない人のうち、340万人が55歳以上であることが分かった。そのうち約150万人が早期退職者であり、約100万人は引退した人たちだという。レポートでは、この2つの退職者グループは「仕事に戻らない可能性が高い」とある。つまり、ゴールドマン・サックスは、現在不足している500万人の労働者のうち、約半数は労働力としてもう戻って来ないかもしれないと考えているのだ。
これは労働力が不足している業界にとっては悪いニュースで、ウェンディーズ(Wendy’s)は店舗を早めに閉めているし、カリフォルニアの保育事業者は人員を確保できずに閉鎖し、清掃会社は従業員がいないので仕事をキャンセルしている。しかし、残った求職者にとっては、人手不足によって、よりよい賃金や条件を求めることができるので、よいニュースと言えるかもしれない。
パンデミックの影響で高齢者が早期に仕事から離れるようになった
カンザスシティ連邦準備銀行の調査によると、2010年から2020年の間に、これまでの傾向に沿って推移していれば、パンデミック期の退職者数は150万人と予想されていたが、実際にはその数は300万人を超え、早期退職者だけで予想された退職者と同じ数になっている。
ゴールドマン・サックスが指摘するように、退職は労働力を失う他の理由と比べると、「頑固な傾向」がある。そのため「早期退職者による労働者不足は、今後の新規退職者の減少によって、比較的ゆっくりと解消される」という。
興味深いことに、カンザス連銀の調査では、退職者数の増加は退職者が労働力として復帰しないことを選択したことによるものだという。求人情報に関する口コミサイト、グラスドア(Glassdoor)のシニアエコノミスト、ダニエル・ザオ(Daniel Zhao)がツイートしたように、「労働者の復帰の流れは弱くなっている」が、この先の最良のシナリオは、ひっ迫した労働市場とパンデミックが終息が相まって退職者が戻ってくることだという。
しかし、アメリカのマーティ・ウォルシュ(Marty Walsh)労働長官がInsiderに語ったように、パンデミックは前例のない時代をもたらし、高齢の労働者たちはウイルスがもたらす健康上のリスクに依然として不安を感じているかもしれない。
人手不足の業界は、250万人の退職者が仕事への復帰を控えていることを痛感しているだろう。仕事を辞めた労働者数は過去最高を更新している。これは転職をして賃金を上げたい労働者にとってはよいニュースだが、全体としての労働力不足は、もう少しの間続くかもしれない。
(翻訳:大場真由子、編集:Toshihiko Inoue)