麻布演劇市 名医先生
作 ニール・サイモン ニール・サイモン – Wikipedia
第二場「くしゃみ」
芝居好きの国家公務員、国立公園省事務官イワン・イリッチ・チェルジャーコフが妻とともに芝居見物にでかけたところ、直属の上司である国立公園大臣ミハイル・ブラシルホフ将軍閣下とでくわす。
絶好のチャンスとばかりに、チェルジャーコフは観劇の最中、将軍閣下に話かけるのだが、うっかりくしゃみをして、それが将軍の後頭部に命中。
必死でいいわけするはめに。
この失敗を、ほとんど精神がむしばまれるまで気に病んだチェルジャーコフは、翌日、さらに弁明することを決意。
その日は将軍閣下が60名もの陳情者から話を聞く日だったので、チェルジャーコフはその最後に、閣下のもとに赴くのだが――。
第三場「家庭教師」
住みこみの家庭教師をしている若いユリア。
女主人は、ユリアが大人しくて従順なのをいいことに、難癖をつけ、どんどん給料を値切っていく。
80ルーブル払うべきところを10ルーブルにまでしてしまう。
とにかく従順なユリアの物語。
読んでいて、メルヴィルの「バートルビー」を思いだした。
第四場「手術」
歯痛に苦しむ、教会の小間使いフォンミグラーソフが医者に駆けこむ。
が、先生はいない。
いたのは留守番をしている新米助手のクリャーチン。
大騒動のあげく、クリャーチンはフォンミグラーソフの歯を抜くが、失敗。
最後は奇跡を願い、2人で歌いだして幕というドタバタ劇。
第五場「晩秋」
公園のベンチで60代はじめの女性が本を読んでいる。
そこを70代はじめの男性が通りかかる。
おたがいに魅かれあっていることが歌によって示されるのだが、2人の距離は今日のところは縮まらない。
前の「手術」とはがらりと変わり、愁いのきいたひと幕。
夫の正体
第六場「色魔」
人妻を誘惑する名人ピョートルが、得々とその手管をひけらかしながら、誘惑を実践してみせる。
人妻を誘惑しようと思ったら、絶対にご亭主を通じて近づくこと。
ピョートルは偶然をよそおってはご亭主に近づき、奥さんをほめあげる。
亭主は家で妻にそれを話す。
妻のほうはまんざらでもない。
自分をほめ上げるピョートルの話を聞きたがり、ついには亭主にメモをとることを勧めたりする。
亭主のほうはそれを実行し、妻を相手にピョートルがいっていたことを読み上げたりする。
こんなことがあり、ついに妻がピョートルのもとにやってくるのだが、最後はピョートルが思ってもみなかった展開に。
第二幕、第一場「水死芸人」
桟橋を歩く作家のもとに、男が近づいてきていう。
ちょっとした見世物をみたくはないですか。
土佐衛門。
たった3ルーブル。
まじめに溺れやしないよ。
溺れる芝居をぶつんだ。
海に飛びこみ、助けてくれえとわめいてから、プーカプーカ浮かぶ。
とまあ、おかしな商売をする芸人の話。
第二場「オーディション」
オーディションにきた若い女。
受けこたえがちぐはぐで、なんともしまらない。
でも、なんとか演技をみせるまでこぎつけて、「三人姉妹」ラストを見事に演じてみせる。
第三場「弱き者、その名は……」
舞台は銀行の役員室。
事務のキスツーノスは痛風に悩まされ、痛みが増すことを恐れている。
そこに女が面会にやってくる。
亭主は団体査定係のシューキンといい、5か月前に病気になり勤めをクビになってしまった。
で、給料をもらいにいってみたら、前借りをしていたからと減らされている。
あいつが私の知らないところで前借りするはずがない。
不当な扱いをされたとシューキンに訴える。
ここは銀行であなたを助けてはあげられないと、キスツーノスは話すが女は聞き入れない。
いっそう騒ぎたて、キスツーノスは気も狂わんばかりとなる。
第四場「教育」
19歳の誕生日のお祝いに、父親が息子のアントーシャのために女性をあてがおうとする。
アントーシャは奥手で頼りない。
父親はそんなアントーシャをはげまし、いかがわしい界隈へ。
《「パパ……この辺には品性のすぐれた女はいないと思うけど」
「品性のすぐれた女を探してるんじゃない。世間には品性すぐれた女がウジャウジャいる……だから品性すぐれた男たちはこういう場所へ来るはめになるんだ》
出会った女は30ルーブルというが、19のせがれ相手にはちょっと高い。
理由を話し、15ルーブルではどうかと父親は値切る。
《「思いやりがあるいいパパなのね。感心しました。あたいにあんたみたいなパパがいたら、いまごろこんなところで、あんたみたいなパパから値切られたりするような目にあわずにすんだのにね」》
という訳で、20ルーブルで交渉は成立するのだが――。
落語のような一篇。