脳の大統一理論
まえがき
脳の構造
1 知 覚――脳は推論する
2 注 意――信号の精度を操る
3 運 動――制御理論の大転換
4 意思決定――二つの価値のバランス
5 感 情――内臓感覚の現れ
6 好奇心と洞察――仮説を巡らす脳
7 統合失調症と自閉症――精度制御との関わり
8 認知発達と進化、意識――自由エネルギー原理の可能性
あとがき
参考文献
付録 自由エネルギー原理の数理を垣間見る
1 知 覚――脳は推論する
カール・J・フリストン よくわかるフリストンの自由エネルギー原理
ヘルマン・ホルムヘルツ 「知覚とは無意識的推論である。」
ウルリック・ナイサー 「知覚サイクルモデル」
「視知覚」網膜像から物の形や色、物までの距離や配置などを理解し「見えている」という感覚・意識が生じる機能。
網膜の情報をもとに外環境を理解しようとする推論機能による。
「脳はヘルムホルツの自由エネルギーを最小化するように推論を行う」
脳が推論する仕組み → 「最大事後確率推定」を人間が知覚する際には、脳が一瞬で処理している。
知覚とはどんな計算なのか → 予測符号化モデル、予測誤差信号を小さくするために繰り返す処理。
自由エネルギー原理(FEP) →自由エネルギーを最小化するように推論を行うこと。知覚の過程を「ヘルムホルツの自由エネルギーを最小化する」過程だと考える。
事後確率の対数 = 世界の生成モデルの対数 + シャノンサプライズ
・事後確率p(u|s):感覚信号sが得られたという条件の下で、外環境の隠れ状態uである確率
ヘルムホルツの自由エネルギー = 認識確率と真の事後確率のダイバージェンス(違いの量) + シャノンサプライズ
・シャノンサプライズ:-log p(s) シャノンサプライズは、感覚信号のみで決まり、推論を行う知覚の過程では定数とみなせる。感覚信号sが滅多に観測されないときに大きな値をとる。
能動的推論
→ 世界から受取る信号を自分が予測する信号に適合するように自分の身体を動かすこと。
欲望の三層構造:能動的推論から捉えるヒトの行動原理 – 心理学 https://what-is-man.me › 脳科学
2020/06/17 — 予測的符号化とは? 能動的推論とは? 意思決定の三層構造:理性と感情の結婚; 脳は次の一手を確実にする …
2 注 意――信号の精度を操る
3 運 動――制御理論の大転換
運動の反射弓 (感覚入力から身体反応までの神経経路)
筋紡錘から、α運動ニューロンへループしているが、α運動ニューロンへは運動野からの信号(予測信号)も入力されている。
この二つを比較して差(予測誤差信号)を最小化している。
サラ・プレイクモア ロンドン大学認知神経科学研究所研究員
サラ=ジェイン・ブレイクモア 「青年期の脳の不思議」
4 意思決定――二つの価値のバランス
「随伴性」状態と手がかり(感覚信号)との関係。
フリストンは、人間は将来のサプライズをできるだke少なくなるように行動すると考えている。
虫明元 (サルを用いた認知行動中の脳活動計測技術)前頭前野には、経路選択の計画に関係するニューロンや現在の状態と将来向かうゴールの組み合わせに選択性を示すニューロンが存在することが明らかになった。
5 感 情――内臓感覚の現れ
感情は、自己の内臓の状態と密接な関係がある。「情動」→外的刺激や記憶の想起によって生じる内蔵や血管の状態で、「感情」→情動に伴う主観的意識体験(気持ちの変化)を表す。
ホメオスタシスとアロスタンス(ホメオスタシスの混乱が大きくならないように体内の状態に関する設定値を予測的に変更する機能)
自律神経系
「パブロフの犬(条件)」を自由エネルギー原理で説明すると、リンゴの摂食とベルの音の随伴性が学習されるとベルの音を聞くとリンゴを食べたときの内蔵状態の予測が起こり、実際の内蔵状態を表す内受容感覚との間に誤差が生じる。ここでその予測誤差が小さくなるように自律神経系で反射弓が働くことにより唾液分泌が生じる。
6 好奇心と洞察――仮説を巡らす脳
アブダクション、リトロダクション(古代ギリシア語: ἀπαγωγή、英: abduction, retroduction)とは、個別の事象を最も適切に説明しうる仮説を導出する論理的推論。 仮説形成や仮説的推論などと訳されている。
このアブダクションは、自由エネルギー原理によれば、その答えは「人間は世界に関する不確実性の最小化を目指して仮説を立てる」である。脳は、世界で起こる現象の特性を表すさまざまな生成モデル(仮説)を作り、その生成モデルが正しいことを示す証拠をかき集めようとするのである。ある哲学者はこのことを「自己証明する脳」と呼んでいる。
第一段階 好奇心による仮説生成
期待自由エネルギー = − 認識的価値 − 実利的価値 − 新奇性
未来の不確実性を表す期待自由エネルギー
隠れ状態に関する不確実性 → 「情報を求めて探求する認識的行動」
成果(感覚信号)に関する不確実性 → 「ゴールを探求する実利的行動」
上記ふたつの結合する確率的随伴性(生成モデル)の不確実性 → 「新奇性を好む好奇心による行動」
好奇心 〘名〙 珍しい事物や未知のことに興味を持つ心。物好きな心。〔教育・心理・論理術語詳解(1885)〕
( ) ( )ジョージ・メイソン大学の意識と変容センターにおける心理学の准教授兼上級研究員。人生における意味と目的,幸福,マインドフルネス,ストレスや不安への対処法,社会的関係について,100本以上のピアレビュー論文を出版している。著書はニューヨークタイムズ,ワシントンポスト,CNN,ナショナル・パブリック・ラジオ,その他のメディアで特集されている。また,2013年アメリカ心理学会(APA)の「キャリア早期における心理学への貢献に対する傑出した科学賞」(APA Distinguished Scientific Award for Early Career Contribution to Psychology)を受賞している。「新規で、不確実で、複雑で、曖昧な出来事を探求しようとする認識、追求、および欲求」
フリストンは、好奇心を「状態と成果の随伴性に関する不確実性を最小化しようとすること」と考えている。
第二段階 洞察で仮説を単純化する
自由エネルギー = 生成モデルの複雑さ − 生成モデルの正確さ
フリストンのシミュレーション → 好奇心や洞察を駆使して、世界の中を眺めることで、限られた脳容量や時間しかもっていない私たちでもその生成モデルを学習することが可能となる。
7 統合失調症と自閉症――精度制御との関わり
「自己主体感」→ある行為を行ったとき「その行為は自分が主体的に行った」感じる感覚。
人間が生きていく中でもっとも予測しにくい場面がコミュニケーションである。コミュニケーションでは相手が何を思っているかを常に予測することが重要だが、その予測はきわめて難しい。
8 認知発達と進化、意識――自由エネルギー原理の可能性
「物体の永続性」物体は場所を移動しても同一性は保たれること、また何かで視野が遮蔽されてもその物体がなくなってしまったのではない。ジャン・ピアジェの研究では、物体の永続性の理解は生後12か月から18か月くらいに徐々に発達することが指摘されている。
「期待違反法」は、対象の振る舞いに関する乳児の期待を調べる方法です。 乳児が知っていることと(期待していること)とは異なる事象を呈示して、乳児がどれだけ興味や驚きを示し、長く注視するかを見ます。ルネ・バイヤルジョンは、生後3か月から4か月くらいに物体の永続性を獲得していることを示した。
フリストンは、能動的推論の直感的説明として、暗闇で部屋の中を歩くとき、次に何に触れるかを予想してそれからその予想を確認しようとすることに似ている。
人間行動の基本原理は、未来にサプライズが起きないように現在の環境を学習するということである。こうした点からあらためて考えることによって、認知発達の原理が見えてくるかもしれない。
生物の進化と存在論
処理過程
知覚と行為 感覚データの生成モデルに基づき、予算誤差を抑制するための神経及び神経筋活動の最適化
↓
学習と注意 感覚中枢神経系におkeる予測誤差の精度と因果関係を符号化するための数秒から数時間にわたるシナプス結合の最適化
↓
神経発達 後成的に指定されるニューロン結合の活動依存的な刈り込みと維持を通してモデルの最適化を行う
↓
進化 長期間の平均自由エネルギーとそれらの生成モデルの選択圧による同種の個体の最適化
それぞれの時間や処理過程が異なるものの、同じ自由エネルギー最小化の原理に従って実現される。
自己の形成
外界(世界)の隠れ状態(x)に応じて感覚信号sとして入力されると、脳の中では自由エネルギーを最小化することによって隠れ状態の近似事後確率(認識確率)を求めることができた。これが近くuである。またサプライズを最小化するように運動αを起こして世界に働き、隠れ状態を変更し新しい感覚情報を獲得する。このように知覚と運動の循環を通じて、隠れ状態と感覚情報の関係性を学び、生成モデルを精緻化する。
マルコフブランケット
意識とはなにか
自由エネルギー原理では、不確実性を最小化することを目指してきた。
1.よりよい予測を生成するために内部状態または信念を変更すること。
2.能動的推論。
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