老後の年金は「6万円」だけ…「持ち家」で「畑」があれば自給自足で生活していける?
老齢基礎年金の支給額が月額で約6万円程度の場合、それだけで生活していけるのでしょうか。通常は難しいといえそうです。しかし、持ち家でローンの返済も終わっており、畑を所有し食費を抑えられたらどうでしょう。 もし年金のみで生活ができるとわかれば、安心して老後を迎えられる可能性が高まります。今回は、65歳以上の消費支出のデータから、年金のみで老後の生活が可能かどうかを解説します。
65歳以上の消費支出額
老齢基礎年金は原則65歳から受給可能なため、ここでは、65歳以上の単身世帯について考えます。総務省統計局の「家計調査」の結果によると、2021年における65歳以上の単身無職世帯の1ヶ月の平均消費支出額は、13万2476円でした。内訳の主なものは「食料」が3万6322円、「住居」が1万3090円、「光熱・水道」が1万2610円などとなっています。
・持ち家で食費が抑えられるケースの支出額 持ち家であれば、上記の「住居」にかかる費用のすべてが不要になるかといえば、そうとも限りません。この住居費には、設備の修繕や維持、工事等の費用も含まれるためです。 持ち家であっても、外壁塗装や屋根・壁の修繕等は定期的に必要となります。ローンを完済しているのであれば、建物自体は古いと考えられるため、予期せぬトラブルが起こる可能性も否定はできないでしょう。
また、畑を所有し食費を抑えられるとしても、食べるものすべてを自給自足でまかなうのは簡単ではありません。
畑で肉や魚をまかなうことはできず、調味料や飲料なども基本的には購入する必要があるためです。 この点を考慮すると、住居費は月平均で数千円程度、食料費も月に1万円前後はかかるとみておくのが妥当でしょう。その場合、65歳の単身世帯の1ヶ月の消費支出額は少なくとも10万円前後は必要となりそうです。
持ち家で食費が抑えられても年金のみでは厳しい
生活水準は人により異なるため、誰もが年金のみで生活ができないとは限りません。しかし、統計をもとに考えると、年金の6万円だけで生活するのは極めて困難といえます。また、消費支出額を毎月10万円以内に抑えられたとしても、それとは別に税金や社会保険料などの非消費支出も必要です。
家計調査によれば、2021年における65歳以上の単身無職世帯の1ヶ月の非消費支出の平均額は1万2271円です。同調査では、65歳以上の単身無職世帯の可処分所得から消費支出を差し引いた値はマイナス9402円となっています。つまり、多くの世帯で赤字となっているのが現状です。
年金のみで生活するためには
家計調査で公表されている消費支出の項目には、食料費や住居費の他に、被服費や交通費、教育費や娯楽費、交際費なども含まれています。これらを節約することで、さらなる消費支出の削減は可能です。
それでも決して楽な生活とはならないため、お金で苦労しない老後を迎えるためには、働いているときの貯蓄や資産形成が重要となってきます。家と畑を所有していて、十分な貯蓄や資産形成ができていれば、年金で毎月6万円程度しか収入がなくても自給自足で生活できる可能性はあるでしょう。
年金のみでの生活は難しいが貯蓄や資産形成次第では可能
老齢基礎年金の6万円程度で毎月生活していくことは、決して容易ではありません。
持ち家で、かつ畑を所有しており自給自足ができたとしても、赤字となる可能性が高いでしょう。
ただし、退職前に貯蓄や資産形成を積極的に行うことで、老後は年金による収入のみで生活が可能となるケースもあります。いずれにせよ、消費支出を抑えるなどの意識と計画的な生活が、老後の安心へとつながりそうです。
出典 総務省統計局 家計調査年報(家計収支編)2021年(令和3年) 執筆者:FINANCIAL FIELD編集部 監修:高橋庸夫 ファイナンシャル・プランナー