第9回 行動観察によるアセスメント
心理的アセスメント(’20)
Psychological Assessment (’20)
主任講師名:森田 美弥子(中部大学教授)、永田 雅子(名古屋大学教授)
【講義概要】
心理的アセスメントとは何をすることなのか? 心理的支援実践においてアセスメントは必須の行為である。クライエントがどういう人であるのか、どのような問題を抱えているのか、といったことを把握しないことには支援の方針計画をたてようがない。では、具体的にどのような方法があるのか、そこで何に留意するとよいのか概説する。
【授業の目標】
本講義を通じて、心理支援における心理的アセスメントの基礎知識を得ることを目標とする。
第9回 行動観察によるアセスメント
面接場面、検査場面、あるいは生活場面等における行動観察からも多くの情報が得られる。ここでは仮想場面をいくつか提示しながら、それをもとに、言葉にならないクライエントの心情や特徴をアセスメントする視点について紹介する。
【キーワード】
顕在化した問題と内面に抱える問題、ノンバーバル・コミュニケーション、転移と逆転移
支援実践場面での観察
申込の仕方、来談の仕方
面接時の様子
日常生活の中で
ノンバーバル・コミュニケーション
関わりの中で得られる情報には多様なものがある。
面接→クライアントが語った内容、その語り方(口調、表情、態度など)
心理検査→検査課題に対する回答や反応、態度、表情を観察することで、クライアントの特徴が示される。
行動で表現されるノンバーバル・コミュニケーションは、時として言葉より、雄弁なことがある。
多くの場合、クライアント自身も自覚せずに示している行動だと考えられる。
「言語の代理的方法として意味をもつ場合と、言語の補填的方法として意味をもつ場合」
言語の代理的方法として意味をもつ場合→障害児者や乳幼児など言語能力、言語コミュニケーションが不十分な場合であり、言葉に代わる行動の意味を理解することが大事である。
語の補填的方法として意味をもつ場合→緊張・不安・共感・防衛など、言葉には表れない意識下の情報が伝達されるもの、無意識の表出とも説明される。
ンバーバル・コミュニケーション行動リスト
・時間的行動
・空間的行動
・身体的行動
・外観
・音声
そして、これらのノンバーバル行動から背後にある心理的状態を推論すること。
ノンバーバル行動間の矛盾や、言語とノンバーバル行動との矛盾に注目し、心理的背景を考えることで、事例の理解に生かせると指摘している。
行動観察によるアセスメントについて,次の①~④の文章のうちから,誤っているものを一つ選べ。
① 心理検査や面接を実施している最中も,行動観察をすることが役にたつ。
② 行動の背景にある意味について,相手の無意識のメッセージを感じ取る。
③ 話し方や声のトーンは,ノンバーバル・コミュニケーションには含まない。 正解です。
④ 心理職との関わりの影響を考慮する。
フィードバック
正解は③です。
【解説/コメント】
①行動観察は常に行うものと言えます。検査における回答や反応の仕方,面接における態度など,クライエントの特徴を知る手がかりは多様にあります。
②行動で表現されるメッセージには,意識的なものも含まれてはいますが,クライエント自身も気づかずにいる無意識的なものを読み取って伝え返していくことは有益です。
③これが「誤っているもの」です。言語を使ってはいるわけですが,話の内容以外に,その切り出し方などは,話すときの態度・表情などとともに,ノンバーバルな表現と言えます。
④「関与しながらの観察」という言葉があるように,関わりの中でのクライエントの言動や態度は,心理職をどこかで意識しながらのものであると考えられます。
印刷教材の第 9 章を参照して,理解を深めてください。