第9回 人格の概念
感情・人格心理学(’21)
Psychology of Emotion and Personality (’21)
主任講師名:大山 泰宏(放送大学教授)、佐々木 玲仁(九州大学大学院准教授)
【講義概要】
本講義では感情心理学および人格心理学について論ずる。ここで取り扱う感情とは「そのときどきの気持ち」のことであり、人格とは「それぞれの人がら」のことである。これらのことについて、どのような概念なのか、あるいはどのように測定するのか、そしてどのように発達していくのかなどについてそれぞれの観点から述べる。また、感情については、その種類や表し方、記憶との関連など、人格については、それをどのように記述するのか、環境との関連、心理療法との関連など、様々なテーマで論じていく。また、感情と人格の繋がりや日常生活との関連についても取り扱う。
【授業の目標】
感情および人格という日常でも出会う概念について、心理学上の様々な論点から考察できるようになること、また、学術的な理解を得るだけでなく、その理解が日常生活とどのような繋がりがあるのかかについての知見を得ることを目標とする。
【履修上の留意点】
人間に対する率直な知的好奇心があれば、予備知識等は特に必要としない。
第9回 人格の概念
ある人の人柄を表すには、さまざまな用語が用いられる。それらの用語のそれぞれの意味するところとその関係について述べる。また、我々はなぜ人柄ということを考えるのかというそもそもの問いについても考えていく。
【キーワード】
人格、気質、性格、特性
アブダクション、リトロダクション(古代ギリシア語: ἀπαγωγή[1]、英: abduction, retroduction)とは、個別の事象を最も適切に説明しうる仮説を導出する論理的推論。仮説形成や仮説的推論などと訳されている。
■人格というものは、「実際にそこにある」ものなのか、説明の都合のために「そこにあることにしている」ものなのかについて考え、それぞれどのような利点と欠点があるのかについて考えてみよう。
■自分が人格というものを考えるのはどのようなときか、考えてみよう。
問題 3 人格の概念の説明として,次の①~④の中から適切でないものを一つ選びなさい。
① 特性という用語は,人格を構成する下位概念として用いられる。
② 人格を考えるための一つの観点は,それが生得的か獲得的かということである。
③ 人格の概念は,ものごとの受け取り方,行動の傾向,考え方の傾向など多様な側面を持っている。
④ 人格概念は実体として捉えるべきで,構成概念として捉えるべきではない。 正解です。
フィードバック 正解は④です。
【解説/コメント】
①②③適切な記述である。
④人格概念は実体として捉えることも構成概念として捉えることもできる概念であり,どちらに捉えるかによって他の様々な概念の捉え方が変わってくる。いずれにしても(P126),実体として優先的に捉えるべき根拠はない。