第7回 思考の錯覚と認知バイアス
第7回 思考の錯覚と認知バイアス
客観的に正しく考えているつもりでも、人は誤った思い込みに陥ることがある。そこには、私たちの情報処理に生じる認知バイアスが働いている。人が備えているバイアスが、どのような思考の錯覚をもたらすのかを、身近な誤信念や思い込みの例から考える。
【キーワード】
確証バイアス、錯誤相関、随伴性の錯覚、迷信
1.体験が生み出す思い違い
(1)誰でも体験から事物を学ぶ
共変性の認知:2つの出来事がともに変化しそこから両者の関係性を認識すること
行動随伴性の学習:[学習心理学]において行動の結果として環境に起こる変化を[学習]すること
出来事の[共変性]([随伴性])を経験し、そこから新たな知識が帰納的に学習されるパターンは重要。
(2)「関連がある」と決定できる条件は?
[前後即因果の誤謬]([post hoc 錯誤]):前後関係のみから因果関係を見出してしまう考え方
[一致と差異の併用法]:比較から関連性を捉える考え方「ある現象の起こっている諸事例が一つの条件のみを共有し、その現象の起こっていない諸事例がその一つの条件を欠くという以外に共通性を持たないならば、その一つの条件が、その現象の原因ないしその一部である。」 という考え方である
[∆P方略]:共生起事例だけではなく比較対象条件を合わせて全ての[セル]を評価する
2つの出来事が連続して発生した場合に関連性を正しく認識するためには全てのケースをカバーした4×4のクロス集計表で検討する必要がある。
[セルA方略]:[共生起事例](A)のみに注意を引かれてしまい、他のセルがどうなっているのかをあまり考慮せずに関連性を判断する
[錯誤相関]]、[幻相関]:関連性の錯覚
(3)雨乞いの科学
[迷信的思考]・雨乞いの例:日常的な出来事はほとんど注意が向かず、日常経験には雨乞いをしたら雨が降ったという事例のみが強く記銘される
実際に存在しない関係性であっても客観的な観察をもとに発見してしまう
体験が根拠なので強いリアリティがある
(4)身近で起こる錯誤相関
大集団より小集団は目立ち、犯罪行為も目立つので錯誤相関が生じやすい
マイノリティが犯罪を犯すと両者の間に関連性があるように感じられる
比較すべき情報に目を向けず、目立つ特徴的な例のみが認知されて起こる
(5)錯誤相関はなぜ生じるのか
[錯誤相関]につながる思考の働きを認知の欠陥のみとして捉えるべきではない
限られた経験から効率的に学習や推論を進める認知システムの働き
限られた特徴的な情報のみから素早く結論を引き出す簡便的な思考方略をとる方が有利に働く
それでもおおよそ実用的に問題のない判断を短時間のうちに下せるのが人の優れた能力
2. 期待と体験によって強化される「思い違い」
自分の仮説を確かめるためには[確証]と[反証]の2つがある; 考えが正しいければYesが確証 考えが正しければNoが反証
(1)2-4-6問題
[2-4-6問題]:多くの人が確証方略で時間をかけるが実は反証方略の方が早く法則性を見出せる
人は確証には注意を向けるが、反証にはほとんど注意を向けない
[確証バイアス]:人が現在持っている信念、理論、仮説を支持し、確証する情報を求め、反証となる証拠の収集を避ける基本傾向
類似概念:[確証傾向]、[一貫性傾向]
ただし、[エバンス]によれば、2-4-6問題は[* [肯定性バイアス]]によるもの(確証の動機付けではなく、反証情報の利用が考えられない認知的失敗の表れ)
(2)確証バイアスの働き
[確証バイアス]は適応的なバイアスでもある
(3)確証バイアスの意味
[文脈効果]:全く同じ文字でも文脈によってBと13とすんなり読める
確証バイアスは効率的に意味のある情報を読み取って処理するという人間にとって欠かせない働きをする
3. 錯誤相関と確証バイアスの連携ループ
(1)誤信迷信は成長する
錯誤相関の発生はボトムアップ的
確証バイアスはトップダウン的に錯誤相関を強化する
このトップダウン処理とボトムアップ処理の組み合わせは最初の予期や信念を強化するフィードバックループを形成する
ドリームテレパシー実験
「ドリームテレパシー実験」とは、ある人が夢を見た内容を、別の人がテレパシー(心の通信)で受け取り、それを当てる実験のことを指します。この実験は、超心理学やパラ心理学の分野で研究されています。
具体的な手順としては、受信者が事前に指定されたシンボルや画像などの情報を見ながら、寝る前にその情報を思い出すように指示されます。そして、受信者が夢を見た内容を、あらかじめ準備されたデータベースから検索し、正解と照らし合わせていきます。
この実験には、まだ科学的な証明がされていないため、あくまで超常現象や個人の主観的な体験として捉えられることが多いです。ただし、実験に参加することで、人間の意識や心の持つ可能性や限界などについて、新しい知見を得ることができるかもしれません。