第5回 外界を知覚する仕組み②

神経・生理心理学(’22)

Neuro- and Physiological Psychology (’22)

主任講師名:髙瀬 堅吉(中央大学教授)

【講義概要】
神経・生理心理学では、心の生物学的基礎についての学びを主題とします。講義では、知覚、記憶、学習、感情、意識などの心の働きを担う脳の機能を中心に学びます。また、睡眠、生体リズム、遺伝子と行動、心の発達、心の病気についても、その生物学的基礎を紹介します。これらの知見に加えて、心の生物学的基礎を明らかにするための研究手法についても触れ、神経・生理心理学の総合的理解を目指します。講義内容は、公認心理師試験出題基準(ブループリント)の項目を網羅し、臨床の現場に関連する話題も扱います。

【授業の目標】
神経・生理心理学の基礎的知見、考え方を身につけることを目標とします。具体的には、1)心の諸機能の生物学的基盤、特に神経系、内分泌系のつくりと働きを理解し、2)知覚、記憶、学習、感情、意識などの心の働きが、神経系や内分泌系の働きによってどのように営まれているかを学びます。そして、1、2の知見を明らかにするための研究手法も学び、神経・生理心理学の総合的理解を目指します。

【履修上の留意点】
心理学の概論的講義を履修済みであることが望ましいです。また、数学、物理学、化学、生物学の知識が受講者に備わっていると、講義の理解は容易になります。しかし、これらの予備知識については、放送授業や印刷教材で、そのつど説明します。

第5回 外界を知覚する仕組み②

①でとりあげた視覚以外の、聴覚、味覚、嗅覚、体性感覚について、それぞれの情報処理の仕組みを理解するとともに、いずれの受容器も、外界の物理化学的刺激が神経細胞の膜電位変化への変換を起点として情報処理を開始することを学びます。

【キーワード】
蝸牛管、有毛細胞、周波数局在、嗅細胞、味細胞、体性感覚皮質


有毛細胞(ゆうもうさいぼう)

内耳の内部で、音の振動を電気信号に変えて脳に伝える役割をしている。 加齢や騒音などの影響で傷つき、壊れてしまうと音を感じ取りにくくなる。 音は、外耳から中耳まで空気の振動として伝わってきて、内耳の「蝸牛(かぎゅう)」という、かたつむりのような螺旋(らせん)状をした器官へ入ります。このとき、音を感受するのが蝸牛内部にある「有毛細胞」という細胞です。有毛細胞は、片耳に約15,000個並んでいて、その名の通り「感覚毛」という細い毛のような束をもっています。
蝸牛に音の振動が伝わると、感覚毛が揺れて興奮し、音を電気信号へと変換します。これが聴神経を経て脳に到達すると、音が聞こえるのです。
そのため、有毛細胞が加齢や騒音の影響などで傷つき、壊れてしまうと、音を感じ取りにくくなり、難聴を引き起こします。一旦壊れてしまった有毛細胞は、元には戻りません。

⇒(1)「鼓膜」がこれを振動に変換
⇒(2)「耳小骨(じしょうこつ)」で振動を増幅
⇒(3)「蝸牛(かぎゅう)」と呼ばれるカタツムリのような器官の中にあるリンパ液が振動
⇒(4)蝸牛の中に生えている「有毛細胞」が刺激を受けて電気信号に変換
⇒(5)蝸牛神経を通って電気信号が脳へ送られる

内耳には、蝸牛というカタツムリのような螺旋(らせん)状の器官がある。引き延ばすと長さにして32mm。カタツムリの殻の入り口の方には高い音を、殻の渦巻きの中に行くほど低い音をキャッチする毛がビッシリと並ぶ。これが「有毛細胞」と呼ばれるもの。文字通り、毛が生えている細胞だ。有毛細胞に生えている「毛」は、高い音から低い音まで鳴らすいわば耳の「鍵盤」なのだ。

振動を増幅する「耳小骨」の一つ(あぶみ骨)は、この蝸牛の入り口に接続。伝わってきた音の振動は、蝸牛の中にたまったリンパ液を揺らすことで波が起こる。この波が鍵盤である毛を揺らすことで音は電気信号になって脳に送られ、私たちは音を感じることができるらしい。

――八木医師「高い音をキャッチする有毛細胞は、あぶみ骨と接する入り口近くにあるだけに、常に刺激や振動を受けていてダメージを受けやすい部位。それだけに、老化が進むと高音から聞こえなくなってくるのです」

この模式図では、音刺激を電気信号に変換する部位、コルチ器とも云いますが、示されております。トンネル腔を挟んで右側1列に並ぶ青い細胞が内有毛細胞です。

いっぽう、左の3列に並ぶ赤い細胞は外有毛細胞と呼ばれスリムな円柱形をしております。音刺激により基底膜が振動すると外有毛細胞の頭部に生えている聴毛がずれ運動を生じ、それが切っ掛けとなってカリウムイオンが流入して細胞を脱分極させます。

この時、外有毛細胞は収縮運動を行って、微弱な音刺激の場合にはそれを増幅し、逆に過大に強い音の場合にはこれを抑制するように働きます。この役割は、音を受け取って脳に伝える役割をする内有毛細胞の働きを助けるものと考えられ、特に立食パーティ会場のようにやかましい環境の中で会話をハッキリと聞き取るために重要な働きをしているのです。

もし、外有毛細胞の働きが無くなりますと、音は聞こえるが話しの内容がハッキリ分からないという状況が生じてきます。

外界からの刺激の受容

  1.感覚の種類
  2.聴覚、前庭覚
  3.視覚





 関連するサイトとリンク(このページへ戻るときはブラウザーの戻るを選んでください)
  Neuroscicence for kidsのSensory systemをぜひ見てください

4.聴覚の中枢神経路

4.有毛細胞が興奮すると、神経伝達物質がシナプスから放出され、蝸牛神経に興奮が伝えられます。蝸牛神経は約3万本あります。蝸牛神経の多くは内有毛細胞に付いており、複雑な音情報を伝えやすくなっています。蝸牛神経は脳幹(のうかん)の蝸牛神経核に到達し、さらに脳幹、中脳下丘(ちゅうのうかきゅう)、古い大脳基底核にある内側膝状体(ないそくしつじょうたい)を経て聴皮質に情報がとどきます。そして音の情報、たとえばことばなどを聞きとることになります。大脳は右半球と左半球とからなりますが、ことばの情報は左半球が中心に分析理解し、音楽は左右の半球が担当しています。

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