第4回 心理アセスメント3 ―パーソナリティ検査、神経心理学的検査―
第4回 心理アセスメント3
―パーソナリティ検査、神経心理学的検査―
心理アセスメントにおいて用いる心理検査のうち、パーソナリティ検査と神経心理学的検査について解説する。
【キーワード】
パーソナリティ検査、投影(映)法、神経心理学的検査
1.パーソナリティ検査(1):心理測定学的手法
特定5因子モデル ビッグファイブ(英: Big Five personality traits)は、共通言語記述子に基づくパーソナリティ特性の分類法である[1]。主要5因子[2]、BigFive性格特性[3]、五因子モデル(FFM)[4]およびOCEANモデル[5]としても知られている。
MMPI MMPIは、Hathaway,S.R. (ハサウェイ)と McKinley,J.C(マッキンリー)によって開発された人格特徴の検査方法です(当初の開発の目的は、精神医学的診断の客観的尺度の作成)。 1943年に刊行され真偽型の目録法で、550項目からなり、日本語版の最新版は1993年に標準化資料が公表されています。
ミネソタ多面人格目録(ミネソタためんじんかくもくろく、Minnesota Multiphasic Personality Inventory)は、質問紙法の心理検査で、英語名の頭文字をとってMMPIとも呼ばれる。2020年に公刊されたMMPI-3がその最新版である。[1]
エゴグラム エゴグラム (Egograms) とは、エリック・バーン (Eric Berne) の交流分析における自我状態をもとに、弟子であるジョン・M・デュセイ (John M. Dusay) が考案した性格診断法で[1]、人の心を5つに分類し、その5つの自我状態が放出する心的エネルギーの高さをグラフにしたもののことである[2]。
バーンの交流分析におけるP(親)、A(大人)、C(子ども)の「3つの自我状態」をもとに、弟子であるジョン・M・デュセイがより細かくCP、NP、A、FC、ACに分類し、人の性格を診断する方法としてエゴグラムを考案した。
心理学者の村上宣寛によると、エゴグラムという心理テストはフロイトの心の構造モデルをもとに日本で考案され、自我を自分(A)、超自我を批判的父(CP)と養育的母(NP)、イドを自由な子供(FC)と順応した子供(AC)に分割して作成されたものであるという[3]。また、エゴグラムは広く普及したが、妥当性はあまり高くはなく、一種の心理ゲームとして用いられていることが指摘されている[3]。
2.パーソナリティ検査(2):投影(映)法
投影法とは、意味の曖昧な素材などを見せて回答者に自由に反応してもらうことで内面や性格を診断する方法のことです。 意図的に回答をねじ曲げることが難しく、深層心理まで捉えられるというメリットがあります。 反面、実施や解釈に時間がかかるので、負担が生じやすいことが特徴です。
SCT(文章完成法) 「SCT(Sentence Completion Test:文章完成法)」は、刺激語(未完成の文章)を提示して自由に完成させることで、パーソナリティの外的および内的状況を具体的に把握する投映法の検査です。 意識と無意識の中間レベルである前意識を投映する検査に位置付けられています。(20答法など)
バウムテスト バウムテストは、人物描画テストの一種であり、主に心理療法や教育において用いられる手法です。被験者に白い紙と鉛筆を渡し、自由に木を描いてもらいます。描かれた木の形、枝や葉の数、樹木の配置などから、被験者の個性、心理状態、思考様式、問題解決能力などを読み取ることができます。
このテストは、1926年にドイツの心理学者カール・コッホによって開発され、その後、多くの研究者によって改良されてきました。バウムテストは、被験者が描く木の形状、大きさ、細部などから、潜在的な心理的な問題や課題を見出すことができるため、臨床心理学や教育心理学などで広く用いられています。
主題統覚検査(TAT) TATとは主題統覚検査と訳される心理検査です。正式名称は「Thematic Apperception Test」であり、その頭文字をとってTATと呼ばれます。この検査は1935年に「Murray,H.A.(マレー)」と「Morgan,C.D.(モーガン)」によって考案された被験者のパーソナリティを測定する検査です。
ロールシャッハテスト ロールシャッハテスト(Rorschach Test)は、人間の心理状態や性格特性を調べるための心理テストの一種です。このテストでは、インクを落とした紙を折りたたんで作った折り紙を提示し、被験者にそれを見て何をイメージするかを尋ねます。被験者が見たイメージや感じた印象によって、心理状態や性格特性を分析します。このテストは、フロイト派の心理分析の理論に基づいて開発されました。しかし、近年では科学的な根拠に欠けるとの批判もあり、専門家の中でも評価が分かれているといえます。また、正しい解釈を行うためには、専門の心理学者による解釈が必要であり、自己診断には適していません。
3.神経心理学的検査
(1)高齢者の認知機能のアセスメントツール
HDS-R 長谷川式認知症スケール 長谷川式認知症スケールは、精神科医の長谷川和夫先生によって開発されました。限られた時間と限られたスペースで、医師が効率的かつ公平に認知機能の低下を診断するために1974年に開発され、1991年に一部改定を経て今に至るまで利用されています。
MMSE MMSE (Mini-Mental State Examination:ミニメンタルステート検査)(6-10分)
MMSEは時間の見当識、場所の見当識、3単語の即時再生と遅延再生、計算、物品呼称、文章復唱、3段階の口頭命令、書字命令、文章書字、図形模写の計11項目から構成される30点満点の認知機能検査である。MMSEは23点以下が認知症疑いである(感度81%、特異度89%)16,17)。27点以下は軽度認知障害(MCI)が疑われる(感度45-60%、特異度65-90%)18-20)。
(2) 失語症のアセスメントツール
失語症とは、「大脳の損傷に由来し、一旦獲得された言語機能が障害される」ことです。 われわれは、日常会話において言語を操作することでコミュニケーションを行っていますが、失語症になると”聴く””話す””読む””書く”といった言語機能の全ての面にさまざまな障害が生じます。
SLTA SLTA 標準失語症検査 Standard Language Test of Aphasia
WAB
- Kertesz,Aの創出によるWestern Aphasia Battery(WAB)は、失語症検査に統計学的、数量分類学的手法を導入したものとして広く世界の関心をひいているが、それを基に多くの改良をおこなって、日本語版としたもの。失語症の臨床、研究に携わるすべての人々にその成果を問うものである。
- WAB失語症検査は、検査が包括的であると同時に実用的で、口頭言語の部分は1時間以内で検査が可能。
- 失語指数が算出できるので、失語症の回復あるいは増悪を評価しやすい。
- 検査得点からブローカ失語、ウェルニッケ失語、全失語などの分類を試みている唯一の検査。
- 失語症の検査項目以外に失行検査、半側空間無視の検査、非言語性知能検査などを含んでおり、大脳皮質 指数を算出できるのも大きな特徴である。
- すぐれた英語版WAB失語症検査と近似度の高い「日本語版WAB」を完成。臨床上だけでなく研究上に も使用できるよう作製されている。
(3)ベンダー・ゲシュタルト検査
ベンダー・視覚・運動・ゲシュタルト・テスト(Bender Visual Motor Gestalt Test)は、単にベンダー・ゲシュタルト・テスト(Bender Gestalt Test)ともいい、児童神経精神科医のロレッタ・ベンダーによって最初に開発された心理検査のことである。この検査は「視覚・運動成熟度」の評価や発達障害のスクリーニング、神経機能や脳障害の評価に用いられる。
オリジナルの検査は9つの図形からなり、図形のそれぞれは3×5カードに描かれている。被験者はそれぞれの図形を提示され、白紙に書き写すように求められる。検査は通常7-10分かかり、その後で、正確さとその他の特徴に基づいて結果が得点化される。
ベンダーはこのテストを『視覚・運動 ゲシュタルト・テストとその臨床的使用』という題名の1938年のモノグラフで初めて記述した。図形は有名なゲシュタルト心理学者ヴェルトハイマーの研究から引用された。ベンダー・ゲシュタルト・テスト(現在ではしばしばそう呼ばれる)は数十年にわたって学校心理学者や臨床心理学者が用いる検査としては5本の指に入る典型的なものである。このテストは知覚運動技能、知覚運動発達を測定し、神経学的に損傷がないかどうかの示唆を与える。このテストは性格検査や情緒問題の検査としても用いられてきた。
このテストは脳損傷のスクリーニングの手段として用いられてきた。ベンダー自身、このテストは「4-11歳の子どもの脳の機能ゲシュタルト機能の成熟を評価する方法で、与えられた刺激の布置全体に反応する。反応は知覚されたゲシュタルトのパターン化の運動過程である」と述べている。
元来アメリカ予防精神病学会から出版されていたが、1990年代にリバーサイド出版社によって買収され、改訂された質的採点システムと共にベンダーIIとして出版された。ベンダーIIにはオリジナルの9つに対して16の図形が含まれている。ベンダーIIのために新しく改訂されたこのシステムは、ベンダーのオリジナルの採点システムとはほとんど関係なく、むしろ1980年代にブラニガンによって考案されたシステムを改訂したものである。[1]
心理的アセスメントとは、「面接や観察、心理テスト等を通して、クライエントを様々な視点からとらえ、クライエントが抱えている問題を理解すること」です。 診断との違いは、不適応的な側面だけでなく、健康的側面やその人らしさとして行動特性や性格特徴、潜在的な可能性といった側面もとらえた全人格的な理解に努めることです。
心理アセスメントとは、個人の心理状態や能力、性格、行動などを評価するための手法やプロセスを指します。心理アセスメントは、さまざまな目的や場面で使用されます。例えば、臨床心理学やカウンセリングの分野では、クライエントの問題や症状を理解するために使用されます。また、教育や職業訓練の分野では、学習者のレベルや能力を評価するために使用されます。
心理アセスメントには、様々な種類の評価方法があります。例えば、質問紙、インタビュー、観察、テスト、バイオメトリック測定などがあります。これらの方法を組み合わせることで、より詳細で総合的な評価が行われます。
心理アセスメントは、正確かつ適切な評価が必要であり、個人のプライバシーや倫理的な問題にも配慮する必要があります。したがって、心理アセスメントは、訓練を受けた専門家によって実施され、その結果は慎重に分析され、適切な解釈がなされる必要があります。