第3回 知覚心理学
心理学概論
私たちは、目、鼻、口といった感覚器官を通じて、外界からの情報を取り入れている。感覚器官で捉えられた情報は、脳に伝えられ、そこで解釈が加えられたときにはじめて知覚となる。その意味で、知覚は、私たちが考えたり、行動したりする前に生じる、ごく初期段階の心の働きということができる。知覚研究の成果を通じて、知覚という心の世界を探求する。
【キーワード】
感覚と知覚、絶対閾と弁別閾、知覚の体制化、知覚の恒常性、精神物理学
1.感覚と知覚
2.心に映し出される世界
3.精神物理学
1.感覚と知覚
(1)五感と共感覚
感覚
五感(視覚、聴覚、臭覚、触覚、味覚):古代ギリシアの哲学者アリストテレスが最初
運動感覚
平行感覚
内蔵感覚
共感覚(稀に感覚間で混線が生じる)
音を聞くと色を感じる
形を見ると味を感じる
「ブーバ・キキ効果」→形と音とを結びつける能力をもっている。
感覚遮断の実験(Heron 1957)→人間は常に適度な感覚刺激にさらされていなけばならない。
(2)絶対閾と弁別閾
最小刺激:さまざまな感覚の最小刺激の近似値
視覚 晴れた暗い夜に30マイル(48キロメートル)離れたところから見たロウソクの炎
聴覚 静かな状況で20フィート(約6メートル)離れたところにある時計の進む音
味覚 2ガロン(約7.6リットル)の水の中の茶さじ1杯分の砂糖
嗅覚 6部屋に相当する容積全体へ拡散した一滴の香水
触覚 1センチメートルの高さから頬に落ちてきた蠅の羽
絶対閾:感覚を生じさせるのに必要とされる最小の刺激量のことである。
人間の感覚よりも勝る感度を持つ動物は数多くいる(第6回)
弁別閾:二つの刺激が区別できるのに必要な感覚を生じさせる最小の刺激変化量のことである。
丁度可知差異(just noticeable diffierence:jnd)
触2点閾
ウェーバーの法則(Ernst Weber:1795-1878)
(3)感覚順応
感覚順応:同じ刺激に繰り返し触れ続けると、次第に慣れて鈍感になっていく。
カクテル・パーティー効果
(4)脳内地図
カナダの脳外科医ペンフィールド、患者の体性感覚野と呼ばれる脳部位を電極で刺激し、身体感覚の地図を作成した。
2.心に映し出される世界
(1)感覚と知覚
ルビンの壷(図:見えた物、地:その背景となっている部分)壷と顔の両方が同時に「図」として認識されることはない。
反転図形は、「見る」という行為の面白さを教えてくれる。その絵は脳の中にあるということである。
情報を主体的・能動的に解釈することなのである。これは視覚に限ったことではない。
知覚とは、感覚からの情報を解釈し、意味を与える心の働きだといえる。
(2)知覚の体制化
群化の法則(プレグナンツの法則):ゲシュタルト心理学者
図として切り出された対象は、さらに有意味な形態として体制化され、最も単純で安定した形にまとまろうとする傾向がある。
ミューラー・リヤー錯視
エビングハウス錯視
(3)知覚の恒常性
知覚の恒常性:感覚器官に与えられた物理的刺激の情報が変化しても、知覚される情報は比較的、一定に保たれる。
大きさの恒常性
形の恒常性
明るさまたは色の恒常性
http://www.psy.ritsumei.ac.jp/~akitaoka/colorconstancy5.html
3.精神物理学
(1)物の世界と心の世界の関係を探る
フェヒナー(Gustav Fechner:1801-1887)
精神物理学(心理物理学)
刺激の物理的特性と、その刺激によって生じる主観的経験(感覚、知覚)との関係を数量で表すことで問題解決の糸口を示そうとした。
フェヒナーの法則(ウェーバー・フェヒナーの法則)
感覚量は刺激強度の対数に比例して変化するという式を示した。
スティーブンス(Stevens 1957):マグニチュード推定法
精神物理学(心理物理学)
・外的精神物理学:身体の外側の世界と心の動きとの対応関係を物理的の方法論を利用して探究するもの
・内的精神物理学:身体の内側の世界において、生理的な過程と心の動きとの対応関係を探究するもの→生理心理学(第5回)
(2)心理測定法
「精神物理学要綱」(1860)
心理測定法
a.調整法
b.極限法
c.恒常法
心理学概論
目次
1 心理学とは
2 心理学の研究方法
3 知覚心理学
4 学習心理学
5 生理心理学
6 比較心理学
7 教育心理学
8 発達心理学
9 臨床心理学
10 パーソナリティ心理学
11 社会心理学
12 産業・組織心理学
13 文化心理学
14 心理統計の役割
15 心理学を学ぶということ
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