第13回 心の中の異性像アニマ/アニムスがもたらす心の発達過程
一回目 2023/12/20
二回目 2024/01/22
心は本来全体的であるとすれば、ペルソナが男性―女性軸のうちの一方にかたよって形成された場合、生きられていない心の側面は、心の内なる異性像、アニマあるいはアニムスと呼ばれ、外的な人物に投影されることが多い。この心の内なるアニマ/アニムスの存在や、これを投影された外的な人物との出会いや関係性は、心の発達のプロセスにどのようにつながっていくのだろうか?
【キーワード】
アニマ、アニムス、男性―女性軸、異性像、個性化
1.アニマ/アニムスとは?
ペルソナが男性的か女性的かによって、ペルソナとして生きられなかった心の側面は、心の中の異性像として体験される。これをユングは、アニマあるいはアニムスと呼んだ。
「私は外的な構え、すなわち外的性格をペルソナと名付け、内的な構えをアニマ(/アニムス)すなわちこころ(Seele:ゼーレ)と名付ける」
犀星の詩神ミューズであり、アニマの現れの一つであろう。
室尾犀星 (むろう さいせい、1889年〈明治22年〉8月1日 – 1962年〈昭和37年〉3月26日)は、日本の詩人・小説家。石川県金沢市出身。
女性にとってのアニムスを表現した詩は、アメリカの自宅でひっそりと55年の生涯を送ったエミリーの遺した”The master”である。
アニマ/アニムスの訪れは、心の新たな次元を切り拓く。ここで切り拓かれる次元は、日常の世界とは全く異なる次元なのである。
2.外的対象に投影されるアニマ/アニムス
心の自然な発達の過程において、母親に投影されたアニマ、父親に投影されたアニムスは、やがて外在する人物に投影されるようになる。
人はなぜ激しい恋愛感情にとらわれるのか、心の内なる異性像への深い思いを抱くのだろうか、その目的は何かという問いが発生する。
3.ジェンダーとアニマ/アニムス
こころ・魂(Seele:ゼーレ)の定義「こころ・魂は外的性格(ペルソナ)と完全に補完し合う関係にあるという一般法則が成り立つ」
4.心の発達とアニマ/アニムス体験
ユング心理学においては、集合的な意識やペルソナから独立して、本来の自分らしい人生を生きる個性化の目標とされている以上、この個性化のプロセスも、この男ー女の軸と深く関わる心の営みとなるのである。
「アニマが統合によって意識のエロスになるように、アニムスはロゴスとなる。アニマがそれによって男性の意識に人と人との関係や折り合いを与えるように、アニムスは女性の意識に思考性、熟慮、認識を付与する。」
5.アニマ/アニムスが登場する昔話
さまざまな試練をのりこえながらもアニマ/アニムスを再び追い求めていく困難な過程とは、内的なアニマ/アニムスの統合を目指す道のりであり、多くの人にとって人生後半の内的な課題につながっていく。