第12回 家族という集団
第12回 家族という集団
ここから2回は、家族心理学について概説する。家族が社会心理学の研究対象として取り上げられることは、これまではまれであったが、家族も集団の一つの形態としてとらえるならば、家族にまつわる問題は社会心理学的な事象と考えることができるだろう。家族という集団の特殊性を踏まえたうえで、その機能と構造を検討し、家族心理学の特徴を概観する。
【キーワード】
家族の機能と構造、家族システム論、生態学的システム論、異文化接触
1.家族心理学とは何か
(1) 家族という集団の特殊性
(2) 家族心理学が取り組む課題
・家族にまつわる問題の解決
・家族の健全な発達の促進を目指すもの
2. 家族の機能と構造
(1) 家族の機能
・衣食住を確保し生命・生活を維持していく機能
・個人および家族が直面する危機に対処し、それを克服していく機能
(2) 家族の構造
サルバドール・ミニューチン Minuchin, Salvador アルゼンチン出身の小児科医。家族療法の構造派の創始者。家族システムの構造の歪みに焦点を当て、その修正を重視した。
(a) 境界
(b) 提携
(c) 勢力
(3) 家族円環モデル
オルソンの家族円環モデル:凝集性、適応性、FACESⅢとは
凝集性とは:家族メンバーの相互の情緒的結びつきのことを「凝集性」と呼びます。情緒的結びつきとは簡単に言えば「仲の良さ」です。家族がバラバラな状態から深いつながりまで、①遊離、②分離、③結合、④膠着の4つの段階
適応性とは:家族が直面する危機に対して家族の構造や役割、ルールなどを臨機応変に変化させる柔軟性のことを「適応性」といいます。例えば、母が倒れたときに父が家事をするといったような柔軟性。
適応性は①無秩序、②柔軟、③構造化、④硬直の4段階
3. システムとしての家族
(1) 家族システム論
一般システム理論
・二者関係に還元しない
・双方向の因果の流れを想定
・目的論的な受け止め方
(2) 家族の発達
家族ライフサイクル論
(3) 生態学的システム理論
プロンフェンブレンナー 、ソビエト連邦出身のアメリカ合衆国の発達心理学者で[1]、子どもの発達に関する生態学的システム理論の提唱によって最もよく知られている[2]。ブロンフェンブレンナーの科学的業績と合衆国政府への貢献は、1965年のヘッド・スタート・プログラムの取り組みへの一助となった[3]。ブロンフェンブレンナーの研究と理論は、子どもの発達に及ぼされる環境や社会からの無数の影響についての関心を喚起することによって、発達心理学の観点に変化をもたらす鍵となった
ブロンフェンブレンナー「生態学的システム理論」
(4) 文化の影響
西洋には個人主義
東洋には集団主義
(5) 時代的な変化
時間的要因(クロノシステム):発達段階のような一人の人間における時間的変化(発達的変化)と時代的変化が含まれる
出生数及び合計特殊出生率の年次推移
少子化、晩婚化・非婚化、離婚の増加、出産の高齢化、DINKS
「老衰」による死亡が増加し、2021年には10人の1人が「天寿を全う」した
次に死因別の死亡数を見ると、上位5つは次のような状況です。
▼第1位:悪性新生物(腫瘍)の38万1497人(人口10万対の死亡率は310.7で、前年に比べて4.1ポイント上昇)
▼第2位:心疾患(高血圧性を除く)の21万4623人(同174.88で、同じく8.2ポイント上昇)
▼第3位:老衰の15万2024人(同123.8で、同じく16.5ポイント増加)
▼第4位:脳血管疾患の10万4588人(同85.2で、同じく1.7ポイント低下)
▼第5位:肺炎の7万3190人(同59.6で、同じく4.0ポイント低下)
第1位の悪性新生物は、2021年の全死亡者に占める割合が26.5%(前年度に比べて1.1ポイント低下)で、日本人の3.8人に1人が「がんで死亡している」計算です。
また2016年までは「肺炎」が第3位でしたが、2017年には「脳血管疾患」が第3位、「老衰」が第4位となり、さらに2018年には「老衰」と「脳血管疾患」の順位が逆転しました。その後も「老衰」による死亡が増加していることから、医療・医学等の水準が高まり「天寿を全うする」方の増加が伺えます(2021年には10人に1人が老衰で亡くなっている)。「いかに、我が国の医療提供体制が優れているのか」が確認できるデータと言えるでしょう。
なお「老衰」の人口10万対死亡率の増加は、医療・介護分野において「看取り」がさらに重要なテーマとなることを意味します。厚労省は「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」を作成。そこでは「自分の人生の最終段階において、どのような医療・介護を受けたいのか、逆に受けたくないのかを我々国民1人1人が考え、家族や親しい友人ら、さらに医療・介護関係者と繰り返し、繰り返し話し合っておく」(可能であればそれを文書にしておく)環境・風土の醸成などを進めていくの重要性が謳われています(いわゆるACPの推進、関連記事はこちら)。
ところで主な死因の構成割合は、年齢・性によって相当異なります。
例えば、死因第1を占める「悪性新生物」は、男女ともに5-9歳では大きなシェアを占めますが、その後に低下。しかし30歳を過ぎると増加に転じ(女性では30歳を過ぎた頃から急増)、男性では65-74歳頃、女性では55-59歳頃にピークとなり、再び低下モードにはいります。
高齢になるにつれ「がんによって死亡する割合」が低くなっていくため、「高齢者の特性を踏まえたがん対策」の重要性が伺えます。例えば、「副作用の強い抗がん剤の使用をどう考えるのか」、「根治を目指すのではなく、QOLの維持・改善を主目的とした治療プログラムを組むべきではないのか」といった議論を継続していく必要があるでしょう。
がんによる死亡、男性では「大腸がん」が「胃がん」を抜いて第3位に
さらに、主な部位別に悪性新生物の死亡率を見ると、男性では「肺」が圧倒的に高く(1993年以降第1位)、2021年の死亡数(人口10万対)は5万3279(前年から32増)、死亡率(人口10万対)は89.3(前年から0.5上昇)となりました。
また男性では、「大腸」がん(同様に2万8079、47.0)が、「胃」がん(同様に2万7196人、45.6)を抜いて第3位に躍り出ている点にも注目する必要があります。多さが分かります。
女性では、男性ほどの偏りはなく、第1位は「大腸」がん(同様に2万4337、38.6)、第2位は「肺」がん(同様に2万2933、36.3)、第3位は「膵臓」がん(同様に1万9245、30.5)となりました。
なお部位別のがん死亡率の推移を男女別にみると、次のように傾向そのものに変わりはありませんが、その動き方には若干の性差があります。
▼胃がん:男性↓(減少傾向)、女性→(横這い)
▼肝臓がん:男性↓(減少傾向)、女性↓(減少傾向)
▼膵臓がん:男性↑(増加傾向)、女性↑(増加傾向)
▼肺がん:男性↑(増加傾向)、女性↑(増加傾向)
▼大腸がん:男性↑(増加傾向)、女性↑(増加傾向)
今後、社会的要因なども含めて男女差を詳しく分析していく必要があるでしょう。
クルト・レビン 社会的葛藤の解決
結婚における葛藤の背景
レヴィンの公式 B=f(p,e)
B:行動,p:人,e:環境
結婚集団の特性
・集団が小さいこと 一成員の一挙一投足は、他の成員と集団の状態とに深い影響を与える
・集団は人の中心領域にふれる 個人のヴァィタルな問題や人格の中心層と非常に密接な関係をもっている
・成員間の密接な関係 第三者には普通隠されている状況をもともと分かち合う
内容説明
社会の実際問題をどのように把握し、解決の道筋を見出すことができるのか。レヴィンの実践的洞察の到達点。心理学に多大な足跡を残したクルト・レヴィンの古典的名著が待望の復刊! 文化と再教育の問題、家族や工場での小規模な対面集団における葛藤の問題、少数集団、特にユダヤ人集団の社会心理的諸問題など、社会生活の実践的な問題の「診断」や解決策の探索を扱っています。 第2巻『社会科学における場の理論』と同時刊行です。
目次
第1部 文化の変更に関する諸問題
第1章 アメリカとドイツとの2、3の社会心理学的差異
第2章 文化の再建
第3章 ドイツの特殊例
第4章 行為、知識、および新しい価値の受容
第2部 対面集団における葛藤
第5章 社会的空間における実験
第6章 結婚における葛藤の背景
第7章 時間的展望とモラール
第8章 産業における慢性的葛藤の解決
第3部 集団間の葛藤と集団所属性
第9章 少数集団の心理社会学的諸問題
第10章 危機にのぞんで
第11章 ユダヤの児童の養育
第12章 ユダヤ人の自己嫌悪
第13章 アクション・リサーチと少数者の諸問題