第11回 面接法2:調査的面接法

心理学研究法(’20)

Psychological Research Methods (’20)

主任講師名:三浦 麻子(大阪大学大学院教授)

【講義概要】
心理学の諸領域で用いられている基礎的な研究法について講義する。学習者が自らテーマを設定して研究を計画し、一連の科学的実証手続きを経てそれを遂行できるようになることを目指して、心理学の研究者・実践家としての心構えを含めて、スキルとテクニックを教授する。

【授業の目標】
心理学の諸領域で用いられている基礎的な研究法を学び、それらをふまえて自らテーマを設定して研究を計画し、収集したデータを分析・考察するという一連の科学的実証手続きを遂行するためのスキルとテクニックを習得することを目指す。

第11回 面接法2:調査的面接法

観察法や質問紙法と比較しつつ面接法がもつ特徴について学び、研究法上の位置づけについて理解する。また構造化の程度に基づく面接の進め方について学び、最後に面接結果の整理と分析方法について理解する。

【キーワード】
構造化面接、半構造化面接、非構造化面接、トランスクリプト、仮説検証型研究、仮説生成型研究

執筆担当講師名:米山 直樹(関西学院大学教授)
放送担当講師名:米山 直樹(関西学院大学教授)


構造化面接法の説明文として正しいものを次の①~④の中から一つ選べ。

構造化面接法であったとしても,面接中の話題がこれから尋ねようとしている内容に近づいてきたら,臨機応変に質問の順番を入れ替えて面接を行って良い。

構造化面接法の場合,あらかじめ質問内容が定められているので,面接の開始直後から本人のプライバシーや内面に関わる内容の質問を行っても問題はない。

構造化面接法の場合,調査を開始してからシナリオや質問項目に修正が必要になると,それまで収集したデータが無駄になってしまう恐れがある。

構造化面接法では,調査対象者の理解を助ける目的や面接者の質問意図を正しく伝える目的で,質問項目の表現やニュアンスを微妙に調整して面接を行っても構わない。

フィードバック
正解は③です。

【解説/コメント】

構造化面接法ではシナリオに従って,決まった順番で質問項目を尋ねていく必要があります。質問の順番が変わることで得られた面接データが質的に異なるものになってしまう恐れがあります。

構造化面接法であったとしても,初対面の相手から自分の内面をいきなり尋ねられたら,調査対象者の中に抵抗感や不信感が生じるでしょう。まずは面接開始当初は一般的な話題について質問するなどして,徐々に警戒心を解いていく必要があります。

構造化面接法は質問の内容や表現,順番が厳密に定められているので,修正が必要になった場合,また新たにデータを一から収集し直さなくてはならなくなります。そのため,シナリオや質問項目の作成に際しては,細心の注意が必要となります。

構造化面接法においては,質問意図を相手によって付加的に提示したり,質問項目の表現やニュアンスを変えてしまったりすると,その影響で入手されるデータも異なってしまう可能性が出てきます。あくまでも事前に定められた表現で質問を行うことが求められます。


面接データの取り扱いおよび分析方法の説明文として正しいものを次の①~④の中から一つ選べ。

① 被面接者から入手した音声データを文字化した場合,誰が発言した内容なのかを間違えないようにするために,必ず被面接者の情報とセットで保管しなくてはならない。

② コーディングの作業では,途中で基準が変わらないように事前に基準を定めておき,名称の変更や概念の拡張などが起きないようにする。

③ 面接内容をどこまで正確に文字化するかというトランスクリプションのレベルは統一基準が定められており,研究者が勝手に変えることは認められていない。

調査的面接法によって得られたデータは,分析作業を行う前に聞き漏らしや意味不明なものが含まれていないかを確認し,必要な処理を施す必要がある。

フィードバック
正解は④です。

【解説/コメント】

個人情報保護や守秘義務の観点から,文字化したデータは誰が発言したのか分からないように匿名化する必要があります。また,被面接者の情報とは別々に保管し,簡単に照合できないようにしておかなくてはなりません。

コーディング作業を進めていくと,頻繁に概念の拡張やカテゴリー名の変更の必要性が出てきます。そのため作業中は頻繁に概念と内容を確認し,新たなカテゴリーを作成するなどして,コーディングの精度を上げていくようにしていきます。

トランスクリプションのレベルは,基本的に研究目的によって決定されることになります。発言内容に焦点を当てたり,発言時の様子などに焦点を当てたりといった違いでレベルは変わっていきます。しかしながら,途中で基準が変化しないように客観的なトランスクリプションのレベルを事前に決めておくことは重要です。

調査的面接法によって得られたデータに対しては,エディティングという分析に移る前に不十分なものが含まれていないかを確認し,必要な処理を施す作業を行う必要があります。この作業は面接者の記憶が鮮明なうちに行わなくてはなりません。

Pocket
LINEで送る

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA