第11回 職場のメンタルヘルス対策
産業・組織心理学(’20)
Industrial and Organizational Psychology (’20)
主任講師名:山口 裕幸(九州大学教授)
【講義概要】
産業・組織心理学は、①組織に所属する人々の行動の特性やその背後にある心理、あるいは人々が組織を形成し、組織としてまとまって行動するときの特性について研究する「組織行動」の領域、②組織経営の鍵を握る人事評価や人事処遇、あるいは人材育成について研究する「人的資源管理」の領域、③働く人々の安全と心身両面の健康を保全し、促進するための方略について研究する「安全衛生」の領域、そして、④よりすぐれたマーケティング戦略に生かすべく消費者心理や宣伝・広告の効果を研究する「消費者行動」の領域からなる。本講義は、それらを全体として統合しつつ、産業・組織心理学の理論と知見を体系的に解説する。
【授業の目標】
①組織における人間行動の特徴とともに、組織体全体に発生する現象の諸特性について理解し、概説できる。
②人材の育成や開発のために必要となる人的資源管理のあり方について理解し、概説できる。
②職場で発生する安全衛生の問題に対して、その解決のための行動や心理学的支援の方法について理解し、概説できる。
④消費者の意思決定や行動の特性ならびに、効果的な宣伝やマーケティングのための心理学的知識について理解し、概説できる。
【履修上の留意点】
本科目を履修する前に「心理学概論(’18)」を履修することが望ましい。また、「社会・集団・家族心理学(’20)」と関連が深い。
※この科目は、心理と教育コース開設科目ですが、社会と産業コースで共用科目となっています。
第11回 職場のメンタルヘルス対策
組織で働く労働者のメンタルヘルスの基本的対策を紹介するとともに、昨今メンタルヘルスを含めた様々な問題に対応する施策として注目されているEAP(従業員支援プログラム)について解説する。
【キーワード】
メンタルヘルス、1次予防、2次予防、3次予防、EAP(従業員支援プログラム)、ストレス
ヤーキーズ・ドットソンの法則
ヤーキーズ・ドットソンの法則 – Wikipedia
労働者健康状況調査
令和2年 労働安全衛生調査(実態調査) 結果の概況
労働者のストレスの原因
メンタルヘルスの対策
一次予防ラインによるケア
ラインケアとは?研修内容や必要性について精神科産業医が解説
職場環境の改善
ストレスチェック
二次予防 早期発見 早期対応
三次予防
「心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き」
職場復帰支援の手引きの法的な意味
職場復帰支援の手引きに言及する判例を例に挙げながら、職場復帰支援の手引きの法的な意味を説き起こします。
併せて、企業が職員の職場復帰支援を行う意義を論じています。
職場復帰支援5つのステップと5つのポイント
「事業場における労働者の心の健康づくりのための指針」
「職場における心とからだの健康づくりのための手引き」を追加(こころの耳)
EAP
次の①~④の記述から,組織におけるメンタルヘルス対策として誤った説明を一つ選びなさい。
① 1 次予防とは,労働者のポジティブなメンタルヘルスを促進するための取り組みである。 正解です。
② ラインによるケアとは,労働者を率いる管理・監督者によるケアを意味する。
③ 2 次予防は,重篤な精神疾病を引き起こさないよう,早期の段階で疾病を発見し,対応する取り組みを指す。
④ 3 次予防とは,既にうつ病等の精神的な疾病が発症している不調者の回復と就労を支援することである。
フィードバック
正解は①です。
【解説/コメント】
①よく理解されています。この記述内容は誤りです。1 次予防とは,労働者のメンタルヘルスの不調を予防するための取り組みです。メンタルヘルスの不調を予防するためには,「労働者自身のセルフケア」,「ラインによるケア」,「職場環境の改善」が奨励されています。
②この記述内容は正しいです。管理・監督者は,現場の業績や生産性に関する責任だけでなく,労働者がイキイキと働くためにメンタルヘルスについても支援する役割も期待されています。
③この記述内容は正しいです。2 次予防では,メンタルヘルスの不調に陥った人を,できるだけ早期に発見して何らかの対応を取ることが,メンタルヘルスの回復にも,また通常の仕事に復帰する上でも重要とされています。
④この記述内容は正しいです。精神的な疾患を発症した場合には,症状を軽快させるために,多くの場合休業を余儀なくされているため,いかに休職した労働者をスムーズに復帰させるかが,3 次予防の重要な課題となっています。