第11回 コミュニティ・アプローチ
第11回 コミュニティ・アプローチ
コミュニティ心理学を基盤とするコミュニティ・アプローチの理念やコミュニティで活動する心理臨床家の基本姿勢、代表的な介入法について概説する。
【キーワード】
コミュニティ・アプローチ、予防、危機介入、コンサルテーション、ソーシャルサポート・ネットワーキング、子育て支援
1.コミュニティ・アプローチとコミュニティ心理学
(1)コミュニティ・アプローチとは
コミュニティ・アプローチとは「人々が共に生き、それぞれの生き方を尊重し、主体的に働きかけていく生活環境システム」を言う。
コミュニティアプローチとは、自宅や施設などへの訪問による地域支援です。 支援者がクライエントの住む自宅や施設、日中過ごしている場所、その地域に出向くアウトリーチ(訪問支援)は、障がい者だけではなく、子どもや高齢者にとっても同じように大切です。
コミュニティ心理学(community psychology)コミュニティ心理学は,1960年代のアメリカにおける地域精神保健運動の高まりを背景に誕生した比較的新しい心理学の分野である。初めて正式にこの用語が用いられたのは,1965年にアメリカ,マサチューセッツ州スワンプスコットで行なわれたボストン会議(地域精神保健のための心理学の教育に関する会議)であり,この会議においては,従来の臨床心理学の限界を超え,社会のニーズに応じることができる心理学者の養成に向け,今日のコミュニティ心理学につながるさまざまな鍵概念が議論された。
日本へのコミュニティ心理学の導入に大きな役割を果たした山本和郎(1986)は,「コミュニティ心理学とは,さまざまな異なる身体的心理的社会的文化的条件をもつ人びとが,だれも切り捨てられることなくともに生きることを模索する中で,人と環境の適合性を最大にするための基礎知識と方略に関して,実際に起こるさまざまな心理的社会的問題の解決に具体的に参加しながら研究を進める心理学である」と定義づけている。
しかしながら,コミュニティ心理学は,発展途上の分野であるとともに,社会的動向と強く結びついた学問・実践領域であり,社会的ニーズの変化・多様化を受け,その定義や関心領域も変化しつづけている。コミュニティの概念も,物理的空間を共有する可視的な地理的コミュニティばかりでなく,価値観や信念,関心などを共有する人びとの関係性を重視するものへと変化しており,さらに近年のインターネットの爆発的な広がりは,人と人とのつながりのありようをも急速に変化,多様化させている。サラセンSarasen,S.B.(1974)は,人の集まりがコミュニティたるための条件として,コミュニティ内に個人を超えた情緒的な結びつきの感覚であるコミュニティ感覚psychological sense of communityが存在することを重視している。
さまざまな資源を活用した実践に加えて,当事者の生活に影響を及ぼす環境側の変容を求めて政策や制度に働きかけるなど,社会変革のための活動を担っていくことも,コミュニティ心理学の実践手法に含まれる。こうしたコミュニティ心理学の実践においては,問題を査定し,コミュニティに存在する援助資源,個々人の資源の利用状況や既存の対処行動なども見定めながら,介入の方向性や次元,方法を決定し実行していくことになり,ニーズ査定,介入のプロセスのモニタリング・結果の評価などを行なっていく一連のプロセスが重要となる。
〔大西 晶子〕