第10回 経済学から見た自然災害に対するレジリエンス:東日本大震災の経験を踏まえて
この回では、災害の予見や回避の範囲について非常に狭く限定することを前提に法的な過失責任を特定の個人や団体に負わすよりも、災害の予測範囲や回避手段をできるだけ柔軟に設定して広範な人々がベストエフォートベースで災害に備えることの重要性を強調している。また、不幸にして自然災害で被害が生じた場合にも、量的、質的な回復を適度に抑制する方が、持続可能な復興が実現できることを指摘する。
1.自然災害に備えるとは?
2.事例研究(その1):ソフトウェア(危機対応マニュアル)による対応の重要性
3.事例研究(その2):適度な震災復興とは?
1.自然災害に備えるとは?
(1)過失責任で問える範囲の狭さ
予見可能性があったにも関わらず、結果回避可能性を高めなかったことは過失責任が問われることになる。福島第一原子力発電所の自己の法廷では、予見可能性の範囲は非常に狭く捉えられていた。
つまり東京電力は、津波があることを想定してしまうと膨大なコストがかかってしまうまたは、原子力発電所自体の稼働が出来なくなってしまう恐れがあるため、予見を低く見積もっていた。
(2)「あり得ることは起こる。あり得ないことも起こる」
原子力安全委員会委員長の班目春樹は、「つまり何でもかんでも、可能性があるとしていたら、ものなんて絶対作れません。だからどっかで割り切るのです」と言っていたが、これはイケない。過失責任を問われてもなにも言えなくなる。これに対して、政府事故調査委員会委員長 畑村洋太郎は「あり得ることは起こる。あり得ないことも起こる」と述べている。
2.事例研究(その1):ソフトウェア(危機対応マニュアル)による対応の重要性
(1)自然災害への柔軟な備え
(2)無視された兆候ベース危機対応マニュアル
(3)なぜ、兆候ベース危機対応マニュアルは無視されたのか?
3.事例研究(その2):適度な震災復興とは?
(1)「復旧」、「復興」とはいうけれども
(2)適切な復興規模とは?
(3)東日本大震災の復興計画からの教訓