第1回 ヒトと感染症の歴史

感染症と生体防御(’18)

Infectious Disease and Host Defense (’18)

主任講師名:田城 孝雄(放送大学教授)、北村 聖(地域医療研究所シニアアドバイザー)

【講義概要】
本講義は、人間の健康について広範に論ずる「健康科学」の中の講義の一つとして実施される。健康科学は人間生活に密接に関わる学問であることから、感染症関係では昨今の話題であるHIV、結核はもとよりSARS、新型インフルエンザなどの新興・再興感染症と医療現場での感染症問題に特に焦点を当てた。また、生態防御については、免疫システムの多様性と多型性、自然免疫と獲得免疫、自己免疫と免疫が関与する疾患などを中心に免疫学の最近の動向についてわかりやすく疾患との関係も踏まえながら講義を行う。

【授業の目標】
交通機関の発達、生活様式の変化、そして医療技術の進歩や医療行為に伴い現代社会に脅威を及ぼしている感染症の特徴を正しく理解するとともに、これら感染症などに対処するためにヒトが有している免疫システムの特徴および多様性について理解を得るようにする。

【履修上の留意点】
「公衆衛生」も履修することが望ましい。
※この科目は、2016年度以降のカリキュラムの方においては生活と福祉コース開設科目ですが、自然と環境コースで共用科目となっています。


第1回 ヒトと感染症の歴史

1.感染症の定義

感染症とは、

2.感染症成立の3大要因

3.人類の歴史と感染症の関わり

(1)ベスト

(2)コレラ

ジョン・スノー縁の地を訪問

(3)インフルエンザ(influence)

(4)結核

女工哀史

4.まとめ

天然痘、ペスト、結核、赤痢、コレラ

 


各回のテーマと授業内容

第1回 ヒトと感染症の歴史

感染症は、人間社会の脅威となってきた。交通機関の発達や医学の進歩により克服されたと思われていた感染症は、薬剤耐性を獲得するなどして、その様相を変えて再び現代社会の脅威となっている。講義では人類に脅威を及ぼしてきた感染症の変遷、そして対策の変化を理解する。

【キーワード】
天然痘、ペスト、結核、赤痢、コレラ

執筆担当講師名:田城 孝雄(放送大学教授)
放送担当講師名:田城 孝雄(放送大学教授)

第2回 免疫学総論

疫(感染症)を免れるという体の免疫のしくみ、免疫系を構成する要素とその働きについて解説する。抗体の構造と機能、抗体の種類とその生物学的活性、抗体の多様性を生み出す遺伝子の再構成、抗体を作り出すリンパ球の種類とその機能、リンパ球の働きを調節する分子等について述べる。

【キーワード】
自然免疫と獲得免疫、液性免疫、細胞性免疫、抗体、抗体遺伝子の再構成、Bリンパ球、Tリンパ球

執筆担当講師名:北村 聖(地域医療研究所シニアアドバイザー)
放送担当講師名:北村 聖(地域医療研究所シニアアドバイザー)

第3回 細菌感染と免疫応答

細菌感染の概説、感染症を生じる病原細菌の分類と、感染経路と、生体防御機構の細菌感染に対する免疫応答について解説する。

【キーワード】
グラム陽性菌、グラム陰性菌、球菌

執筆担当講師名:北村 聖(地域医療研究所シニアアドバイザー)
放送担当講師名:北村 聖(地域医療研究所シニアアドバイザー)

第4回 ウイルス感染と免疫応答

ウイルスの性質とウイルス感染の基本を学ぶ。ウイルス感染に対する宿主の免疫応答の基本も学ぶ。

【キーワード】
ウイルス、感染経路、持続感染、潜伏感染、ウイルス免疫

執筆担当講師名:北村 義浩(日本医科大学特任教授)
放送担当講師名:北村 義浩(日本医科大学特任教授)

第5回 市中感染症①

普段の社会生活を送っている中で罹患した感染症である市中感染症は最も一般的な感染症である。市中感染症に関して、その起因菌と診断について解説する。

【キーワード】
市中肺炎、腸管感染症、肺炎球菌、病原性大腸菌

執筆担当講師名:岩田 健太郎(神戸大学教授)
放送担当講師名:岩田 健太郎(神戸大学教授)

第6回 市中感染症②

普段の社会生活を送っている中で罹患した市中感染症に関して、その代表的な疾患を挙げて、診断と治療を講義する。感染症の診断には、病原体を検出する方法と、患者が示す免疫反応により診断する方法がある。感染症の治療の中心である化学療法薬の分類と実際の使用法について解説する。

【キーワード】
抗生物質、βラクタム、マクロライド、アミノ配糖体、キノロン

執筆担当講師名:岩田 健太郎(神戸大学教授)
放送担当講師名:岩田 健太郎(神戸大学教授)

第7回 結核

人類とともに歩んできた結核が、現在もなお世界の大きな保健医療上の課題となっている現状を認識させるとともに、感染症としての結核についてその病原体、感染伝播の様式、発病にいたる経過などについて基本的な知識を習得させる。結核の発病、診断、治療そして予防について基本的な知識を習得させる。

【キーワード】
結核、DOTS、日和見感染

執筆担当講師名:乾 啓洋(順天堂大学准教授)
放送担当講師名:乾 啓洋(順天堂大学准教授)

第8回 HIV感染症

流行発覚後4半世紀の間に、HIV/AIDS流行は推定感染者数4千万人というパンデミックに発展し、現在東アジアで急速に拡大しつつある。わが国は、多剤併用療法登場後も、HIV感染者とAIDS患者数が、未だに同時に増加を続けている稀な先進国である。HIV感染とAIDSの病態について解説する。

【キーワード】
HIV、HIV感染、AIDS

執筆担当講師名:乾 啓洋(順天堂大学准教授)
放送担当講師名:乾 啓洋(順天堂大学准教授)

第9回 真菌感染症

真菌には種々の種類がある。発酵食品の製造で役立つものもあるが、住居や食べ物に生えて人々を不快にするカビもある。ヒトの体にも、この真菌が感染し水虫、フケなどの病害を及ぼす。症状が無く、本人が感染に気が付かない不顕性感染もあるし、体の深部にも感染が広がり、時には重篤となる場合もある。真菌感染症を防ぐ日常生活の知識を紹介する。

【キーワード】
真菌症、日和見感染、カンジダ、クリプトコッカス、アスペルギルス

執筆担当講師名:高橋 優三(岐阜大学名誉教授、兵庫医科大学客員教授)
放送担当講師名:高橋 優三(岐阜大学名誉教授、兵庫医科大学客員教授)

第10回 寄生虫感染症

寄生虫感染症はウイルスや細菌などの感染症と比較して、生物学的、臨床的、また公衆衛生学的にも、興味深い側面を有している。病原体自身が高度に進化した動物であり、寄生適応にあたって、複雑な宿主-寄生虫相互作用を必要としている。感染の成立の条件を軸に、講義では、寄生虫感染がその地域の環境や文化に依存している例を挙げ、安全な海外旅行や食生活のための知識を紹介する。

【キーワード】
回虫、日本住血吸虫、マラリア原虫、赤痢アメーバ、トキソプラズマ

執筆担当講師名:高橋 優三(岐阜大学名誉教授、兵庫医科大学客員教授)
放送担当講師名:高橋 優三(岐阜大学名誉教授、兵庫医科大学客員教授)

第11回 衛生動物による健康被害

衛生動物とは、人の健康に害を及ぼす有害な小動物の総称である。健康害としては、アレルギー反応(ダニ、蜂、蚊、ムカデなど)、有毒物質(蛇、アオバアリガタハネカクシ)、病原体の媒介(蚊、ツェツェバエ、マダニ、鼠、犬など)などが知られている。特にアナフィラキシーショック、熱性疾患(マラリア、アフリカ睡眠病、出血熱)、狂犬病などは、命に関わる重大関心事である。

【キーワード】
衛生動物、ダニ、ノミ、媒介、アレルギー

執筆担当講師名:高橋 優三(岐阜大学名誉教授、兵庫医科大学客員教授)
放送担当講師名:高橋 優三(岐阜大学名誉教授、兵庫医科大学客員教授)

第12回 医療関連感染症①
(医療関連感染)

医療関連感染とは入院後、48時間以降に起こった感染症の総称である。代表的な医療関連感染の概要およびその包括的な予防策について学ぶ。

【キーワード】
医療関連感染、日和見感染、感染対策

執筆担当講師名:矢野 晴美(国際医療福祉大学教授)
放送担当講師名:矢野 晴美(国際医療福祉大学教授)

第13回 医療関連感染症②
(感染経路別感染対策と職業感染予防)

院内における感染経路のまとめと感染経路別感染対策について学ぶ。また医療現場での職業感染対策について、ワクチン接種および針刺し切創について学ぶ。

【キーワード】
標準予防策、経路別感染対策、針刺し切創

執筆担当講師名:矢野 晴美(国際医療福祉大学教授)
放送担当講師名:矢野 晴美(国際医療福祉大学教授)

第14回 予防接種と感染症

ワクチンは病原体の一部分、あるいは病原性を減弱した病原体から作られる。感染症から身を守るためには治療よりもワクチンによる予防の方が効果的である。ワクチンと予防接種の基本とわが国の予防接種行政の仕組みの概略を学ぶ。

【キーワード】
予防接種、生ワクチン、不活化ワクチン、トキソイド、定期接種

執筆担当講師名:北村 義浩(日本医科大学特任教授)
放送担当講師名:北村 義浩(日本医科大学特任教授)

第15回 21世紀の感染症の課題
-国内と国際保健の課題-

わが国の感染症対策は明治維新以降の国家体制の整備とともにはじまり、医学の進歩等により感染症は急速に制圧されていった。しかしまた、これまで知られていなかった新たな感染症も出現している。感染症対策には医療体制の整備など発生時の的確な対応のみならず、法制度等の整備による事前対応型対策の展開、国際協力などの政策が重要となる。感染症が社会生活に及ぼす影響、国内外の対策、課題、今後の方向性を理解する。さまざまな感染症の世界的規模での流行が危惧される今日、これらに起因する健康被害の発生予防、拡大防止、治療対策を迅速に講じ、初期段階で感染症を制圧することが極めて重要である。途上国の感染症の実態に触れ、わが国の国際協力の在り方について探る。

【キーワード】
感染症対策の三原則、抗生剤、予防接種、感染症法、薬事法、事前対応、国際協力

執筆担当講師名:田城 孝雄(放送大学教授)
北村 義浩(日本医科大学特任教授)

放送担当講師名:田城 孝雄(放送大学教授)
北村 義浩(日本医科大学特任教授)
高橋 優三(岐阜大学名誉教授、兵庫医科大学客員教授)

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