家計の税・社会保険料負担率、最大28% 若年層に偏り

高齢化やインフレの影響で、家計の所得に占める税と社会保険料の負担の割合が2023年9月時点で28%と過去最高水準になっている。高齢者に比べ若年層の負担が重く、消費や出生数を下押ししかねない。家計の負担増を補うには賃上げに加え、社会保障の効率化が重要になる。

内閣府が公表する国民経済計算から日本経済新聞社が試算した。雇用者報酬や財産所得、政府の給付金などを合算して家計全体の所得を割り出し、税負担と年金や医療などの社会保険料負担の合計を分子とした。企業の所得や負担を含めて算出する「国民負担率」とは違い、家計だけの負担率をはじいた。

22年は27.7%と同じ基準で比較できる1994年以降で最も高かった。2023年は1〜9月までで28.1%で通年でも最高となる可能性がある。家計部門のデータは所得税など直接税が対象で、消費税や酒税などは含まない。実際は28.1%よりも高い。

財務省は企業部門も加えた税と社会保障の国民負担率を公表している。企業の所得や間接税なども含む数字で、23年度は46.8%となる。新型コロナウイルス禍からの経済回復や、制度改正の影響による一時的な税収のぶれなどで率としては2年連続で下がる見通しだ。

試算が明らかにした家計負担の高まりは消費に響く。物価変動の影響を除いた実質個人消費は23年10〜12月期まで前期に比べて3四半期連続で減った。

所得から税と社保負担を引いた額が消費や貯蓄に回す「可処分所得」となる。内閣府のデータに基づくと、23年7〜9月期の所得は賃上げなどで前年同期比で1.1%伸びたが、可処分所得は0.4%増にとどまった。税と社保の負担が計3.1%増えたためだ。

高齢化により社会保障費の膨張と保険料負担の増加は止まらない。厚生労働省によると、医療などの社会保険料のうち加入者が払うお金は23年度予算で41兆円と前年度に比べ4.3%増えた。

足元のインフレも影を落とす。第一生命経済研究所の熊野英生氏は負担額の伸びが所得の伸びより大きい要因を「ブラケットクリープが生じたのではないか」とみる。ブラケットクリープはインフレに伴う所得増で累進課税の税率区分が上がって、個人の税負担が重くなる現象を指す。

負担率は低いほど良いわけではない。負担率を下げれば消費底上げで成長を後押しする一方、格差是正などの再分配機能が弱まる恐れがある。バランスが重要だ。

大きな問題は若年層に負担が偏っている点だ。日本総合研究所の牧田健氏の試算では、29歳以下の世帯は消費税などを除く負担率が22年時点で30.2%と全ての年代で最も高い。80歳以上の世帯は20%だった。

岸田文雄政権は少子化対策を拡充する財源として、医療保険料に上乗せする「支援金制度」を26年度から始める。社会保障の歳出改革を通じて実質的な負担増にはしない方針だが、社会保障費を本当に抑えられるかは見通せない。少子化に歯止めをかける対策が、かえって負担を増やして結婚や出産をためらわせる結果になりかねない。

世代間の負担の格差緩和には、所得や資産を多く持つ高齢者の負担拡大も欠かせない。日本総研の牧田氏は「世代間の偏りが少ない消費増税も選択肢だ」と指摘する。

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