今さら聞けない ChatGPTは結局、何がスゴイのか?

2023年3月3日発売の「日経トレンディ2023年4月号」 ▼Amazonで購入する では、「資格・転職・副業の新しい地図」を特集。2022年11月の登場以降、ネットの世界はChatGPTの話題で持ちきりだ。年々、存在感を増すAI(人工知能)と消費者の間の距離をぐっと縮めたChatGPTの実力を分析する。

※日経トレンディ2023年4月号より。詳しくは本誌参照

ChatGPTはAIを身近にさせ、史上最速のペースで月間アクティブユーザー数1億人を突破。「TikTok」などの人気アプリを上回る勢いを見せている
ChatGPTはAIを身近にさせ、史上最速のペースで月間アクティブユーザー数1億人を突破。「TikTok」などの人気アプリを上回る勢いを見せている

対話型AI「ChatGPT」が、一般利用者やIT業界に与えた衝撃は大きい。好奇心をくすぐられて使い勝手や便利な使い方をあれやこれやと試し、その感想や驚きをネットに報告する利用者が世界中で続出。ロイター通信によれば、23年1月に月間アクティブユーザー数が早くも1億人を突破したという。

アカウントを開設すればすぐに使えるようになる。パソコンとスマートフォンに両対応する
アカウントを開設すればすぐに使えるようになる。パソコンとスマートフォンに両対応する

IT業界でも“台風の目”になっている。マイクロソフトはChatGPTを開発・運営するOpenAIに100億ドルを投資すると報じられるなど、自社ビジネスへの活用に意欲的。マイクロソフトの検索エンジン「Bing」へのChatGPT技術の導入も注目を集めた。調べたい情報に関連するキーワードを検索窓に入力し、リスト形式で候補表示された膨大なウェブページをクリックして目当てのものを探す。そうしたこれまでのネット検索の在り方を、根底から変える可能性を秘める。

検索市場における自社の優位性を脅かされる可能性があるGoogleは、ChatGPTへの対決姿勢を強めている。対話型AI「Apprentice Bard」の存在が明らかになり、実用化に向けたテストが急ピッチで進む。

ヒットの軌跡

2015年 イーロン・マスク氏らがOpenAIを設立
2018年 OpenAIが言語モデル「GPT」を発表
2019年 「GPT-2」を発表
2020年 「GPT-3」を発表
2022年 対話型AI「ChatGPT」を発表(11月)。利用者は公開6日目で100万人に到達
2023年 ・マイクロソフトがOpenAIに100億ドルの投資を実施すると報道(1月)
・有料版「ChatGPT Plus」を発表(2月1日)
「ユーザー数の伸びが史上最速」と報じられる(2月1日)
・マイクロソフトが検索エンジン「Bing」へのAI導入を発表(2月7日)

OpenAIの創業メンバーには、テスラCEOとして知られるイーロン・マスク氏も名を連ねている
OpenAIの創業メンバーには、テスラCEOとして知られるイーロン・マスク氏も名を連ねている

ChatGPTが、これほどまでに注目されるのはなぜか。キーワードは「極めて人間に近いAI」だ。人気の理由として、多種多様な質問や相談に対して柔軟に応じてくれる点がまず挙げられる。「東京駅から2時間以内で行ける温泉地」「NFTの活用事例」「人生相談」など、答えを返してくれる範囲がとても幅広い。アマゾンの「アレクサ」やアップルの「Siri」は音声を解析し、あらかじめ用意された応答はできるが、汎用的な言語能力は低い。

日本最大級のベンチャーキャピタル(VC)、WiL(ウィル)のパートナー、久保田雅也氏は「英語や日本語といった自然言語で一般消費者があたかも人間と話しているかのように、AIと自然に会話できるのは革命的だ」と高く評価。ChatGPTが搭載している言語モデル「GPT-3.5」は20年5月にリリースされたGPT-3をベースにしている。「23年春に公開予定の『GPT-4』は計算量が大幅に増加するという。情報の精度はさらに高まると期待できる」(久保田氏)

UI(ユーザーインターフェース)がシンプルな点も見逃せない。ChatGPTとのテキストを介したやり取りは、すべて検索窓のような入力欄を埋めながらチャット形式で進められる。ChatGPTからの回答で疑問に思ったことなどを再び質問すれば、それまでの経緯を踏まえた回答が返ってくるので、1つの事柄について深掘りしていける。これらはまさに、「ググる」に代表される検索体験のアップデートだ。

そして極め付きは、こうした高性能な対話型AIを無料で使える点だ。公式サイトでアカウントを作ればすぐに利用可能。アクセスピーク時でも利用できるなどの特典が付いた月額20ドルのサブスクリプションプログラム「ChatGPT Plus」の提供が米国で始まったが、引き続き無料でも使える(23年2月中旬時点)。

ChatGPTが発火点になる

久保田氏によればAIを取り巻く世界は3層からなり、第1層が「AWS」のようなサーバーやエヌビディアのようなチップといったインフラ群。続く第2層が画像生成AI「Stable Diffusion」や自然言語解析・生成の「Cohere」のようなモデル群だ。様々なアプリやサービスの開発起点となり、ChatGPTもこの第2層に当たる。

「アプリが属する第3層は参入障壁が低く、革新的なサービスが生まれやすい。ChatGPTはこの3層を活性化させるポテンシャルが高く、VCにとっては目利きの力をこれまで以上に問われることになる。ChatGPTを使った様々なサービスが誕生するはずだ」(久保田氏)

AIサービスが続々登場、文字で絵も“描ける”
「Perplexity」もChatGPT同様、質問すると答えを返す(上)。出典も明記するのが特徴だ。「DALL・E 2」は入力したテキストに応じて、画像を生成する(下)。どちらも無料で利用できる。DALL・E 2の画面内の画像は、「かわいい犬」とリクエストして生成された4パターン
「Perplexity」もChatGPT同様、質問すると答えを返す(上)。出典も明記するのが特徴だ。「DALL・E 2」は入力したテキストに応じて、画像を生成する(下)。どちらも無料で利用できる。DALL・E 2の画面内の画像は、「かわいい犬」とリクエストして生成された4パターン
注)掲載情報は23年2月中旬時点のもの

(写真/ロイター/アフロ)

注)「今さら聞けない ChatGPTは結局、何がスゴイのか?」は、「日経トレンディ」2023年4月号に掲載しています。日経クロストレンド有料会員の方は、電子版で最新号をご覧いただけます。
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