シベリアの永久凍土で4万6000年も眠っていた線虫が復活し繁殖、ゲノム解析で「新種」と判明
シベリアの永久凍土で見つかった古代の線虫をよみがえらせる国際的な取り組みより、この線虫が以前考えられていたよりも古い約4万6000年前の時代から復活した新種であることがわかりました。この研究結果が確かであれば、クマムシなどが厳しい環境を生き延びるクリプトビオシスの最長記録が大きく塗り替えられることになります。
A novel nematode species from the Siberian permafrost shares adaptive mechanisms for cryptobiotic survival with C. elegans dauer larva |シベリアの永久凍土からの新しい線虫種は、クリプトバイオティクス生存のための適応メカニズムをCと共有しています。エレガンスダウアー幼虫PLOSGenetics https://doi.org/10.1371/journal.pgen.1010798
Ancient Worm Resurrected After 46,000 Years of Death-Defying Limbo :46,000年の死に逆らったリンボの後に復活した古代のワームScienceAlert https://www.sciencealert.com/ancient-worm-resurrected-after-46000-years-of-death-defying-limbo
Scientists Resurrected an Extinct Animal Frozen for 46,000 Years in Siberia科学者たちはシベリアで46,000年間凍結された絶滅した動物を復活させました https://www.vice.com/en/article/n7e397/scientists-resurrected-an-extinct-animal-frozen-for-46000-years-in-siberia
46,000-Year-Old Worm Possibly Revived from Siberian Permafrost – Scientific Americanシベリアの永久凍土から復活した可能性のある46,000年前のワーム https://www.scientificamerican.com/article/46-000-year-old-worm-possibly-revived-from-siberian-permafrost/
2018年に、シベリアの永久凍土で見つかった2種類の線虫が解凍され、息を吹き返しました。2種のうち、アラゼヤ川流域で見つかったものは4万2000年前の種だと推定され、コリマ川の下流で発見されたもう1種は約3万2000年前の線虫だと推測されました。
シベリアの永久凍土の中で4万年も凍りついていた虫が息を吹き返す – GIGAZINE
今回の研究で、ドイツのマックス・プランク研究所の研究チームが、コリマ川付近の永久凍土から復活した線虫を100世代以上繁殖させてからゲノム解析を行ったところ、新種だということがわかりました。研究チームは、線虫がPanagrolaimus属に属することと、コリマ(Kolyma)川で見つかったことから、新種の線虫をPanagrolaimus kolymaensisと名付けました。 研究チームによると、P. kolymaensisは単為生殖する種であるため、メスだけで繁殖できるとのこと。交尾する必要がないおかげで、温度と湿度を適切に保った状態で寒天培地の上に置いておけば単体で卵を産んで殖えますが、それでも遺伝子解析を行うために必要な2000~4000匹の線虫を繁殖させるのは簡単ではなかったそうです。 遺伝子解析ではまた、実験動物として広く用いられている線虫であるカエノラブディティス・エレガンスがクリプトビオシスに入るために使っている遺伝子を、P. kolymaensisも持っていることがわかりました。
さらに、研究チームは線虫と同じ場所で採取された植物の放射性炭素年代測定結果から、線虫は3万2000年前ではなく4万6000年前から氷漬けになっていたことを明らかにしました。これまでクリプトビオシス状態から復活した最長記録は39年で、P. kolymaensisの記録はそれをはるかに上回ることになります。 2021年には、シベリアの永久凍土で見つかったワムシが2万4000年ぶりに息を吹き返しましたが、P. kolymaensisはこの記録をほぼダブルスコアで塗り替えました。 永久凍土から回収した微生物が2万4000年の時を経て復活 – GIGAZINE
研究チームは今後、クリプトビオシスに関連する共通の遺伝子の役割や、線虫が冬眠状態で生存できる期間の上限について解明したいと考えています。 「これらの発見は、進化の過程を理解する上で重要な意味を持ちます。なぜなら、本来は数日で死ぬ線虫の世代が数千年に延びる可能性や、個体が長期にわたって生存することで一度は絶滅した系統が再び登場する可能性があるからです」と研究者らは論文に記しました。