もはや長生きは地獄。生活保護の半数が高齢者世帯、“最低限度”以下の年金生活者も少なくない厳しい現実=神樹兵輔

2021年度に日本の生活保護費は3.8兆円を突破しました。受給世帯は164万世帯にのぼり、受給者総数は203万人に及びます。今後、問題となってくるのは、高齢者世帯の中に、生活保護を受給できないと暮らしが成り立たない世帯が増えていくことでしょう。生活保護費の圧縮と年金受給年齢アップで「年金減額」必至となる暗黒の近未来がやってきます。(『 神樹兵輔の衰退ニッポンの暗黒地図――政治・経済・社会・マネー・投資の闇をえぐる! 』)

【関連】イカサマ賭博「宝くじ」を買ってしまう7つの認知バイアス。総務省OBに高給を与えるための歪んだ分配構造=神樹兵輔

※本記事は有料メルマガ『神樹兵輔の衰退ニッポンの暗黒地図――政治・経済・社会・マネー・投資の闇をえぐる!』2023年4月10日号の一部抜粋です。ご興味を持たれた方はぜひこの機会に今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。

プロフィール:神樹兵輔(かみき へいすけ)
投資コンサルタント&マネーアナリスト。富裕層向けに「海外投資懇話会」を主宰し、金融・為替・不動産投資情報を提供。著書に『眠れなくなるほど面白い 図解 経済の話』 『面白いほどよくわかる最新経済のしくみ』(日本文芸社)、『経済のカラクリ』 (祥伝社)、『見るだけでわかるピケティ超図解――21世紀の資本完全マスター』 (フォレスト出版)、『知らないとソンする! 価格と儲けのカラクリ』(高橋書店)など著書多数。

60人に1人が生活保護…

みなさま、こんにちは!『 衰退ニッポンの暗黒地図 』をお届けするマネーアナリストの神樹兵輔(かみき へいすけ)です。

今回は、「生活保護」「年金」の問題、その関連性について取り上げていきます。

生活保護制度は、憲法25条の生存権の保証を具現化したものです。「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」という有名な条文をどこかで読まれたこともあるでしょう。

2021年度の日本の生活保護費は、3.8兆円を突破しました。受給世帯は164万世帯にのぼり、受給者総数は203万人に及びます。

すなわち日本では、約60人に1人が生活保護下にあるという貧困国家の様相を呈してきているのです。

生活保護受給者は、敗戦直後の混乱期には200万人を超えていましたが、その後の経済成長とともに減少し、1995年の88万人で最小となりました。しかし、その後急速に上昇し、今日の203万人という受給者数となっています。

また、昨今の日本で注目される子供の「貧困問題」も深刻です。親などが貧困状態にある家庭の18歳未満の子供の割合は、13.5%にも及びます。これが親子代々の「貧困の連鎖」を生んでいきます。約7人に1人の子どもが貧困に苦しんでいるわけです(相対的貧困率)。

その中でも深刻なのがひとり親世帯です。相対的貧困率は48.1%にものぼるからです。

この国の人々がいかに貧乏になってきているか――が窺える状況でしょう。

生活保護受給世帯の半分が高齢者世帯という厳しい現実。増え続ける生活保護費で日本がパンクする

ところで、老後の年金が「最低生活費」に満たない人も、不足分について生活保護費を受給することになります。

ちなみに「最低生活費」とは、生活保護の8種類の扶助(生活扶助・教育扶助・住宅扶助・医療扶助・介護扶助・出産扶助・生業扶助・葬祭扶助)のうち、「生活扶助」「住宅扶助」に絞って割り出された金額で生活保護費とは密接な関係にあるものです。

小泉内閣以降の非正規雇用の拡大で、現役時代の所得が低いため、高齢者になっても年金受給額が「最低生活費」に満たない人たちはどんどん増える傾向にあります。

政治献金をくれる大企業や富裕層のみを優遇する政治を行ってきた自民党政権を支持し続けてきた、日本国民の「自業自得の暗黒の未来」がこれから始まるわけです。


「最低生活費」に届かない年金額でも生活保護を受給していない高齢者が少なくない

前述の通り、生活保護受給世帯は増え続けています。

当然ですが、生活保護支給総額も右肩上がりです。20年近く前の2003年度に2兆3,800億円だった生活保護の支給総額は、2021年度には3兆8,404億円と当然のごとく上昇し続けているのです(国が75%、自治体が25%負担)。

ほぼ20年で1.6倍になっています。そして、この先もこの金額は増え続けます。

なぜ、生活保護受給世帯数と支給総額が増え続けているかといえば、一番の理由が高齢化だからです。2021年度の生活保護受給世帯の164万世帯のうち、65歳以上高齢者世帯が90万8,960世帯(55%)を占めているからです。

現役時代にフリーターや自営業だった人は、老後に無収入となっても国民年金の受給だけが頼りです。国民年金の平均受給額は5.6万円(1人当たり)ですから、夫婦2人合わせても、11.2万円の年金収入なので、生活はかなり厳しいものとなるでしょう。

ただし、この夫婦の場合、11.2万円の年金収入は、「最低生活費(後述)」を下回っていますから、不足分の4~6万円の生活保護費が受給できます(地域によって最低生活費は異なる)。

夫が会社員で、妻が専業主婦だった場合の夫の厚生年金の平均受給額は14.5万円です(国民年金含む)。妻の国民年金5.6万円と合わせると夫婦で20.1万円になるので、なんとかカツカツで生活できるかどうかです。

ただし、この場合の高齢者夫婦は「最低生活費」を上回っていますから、生活保護費は受けられません。

いずれにしろ、このように年金受給者といっても、平均値を見ると、けっして豊かな生活は望めないのです。

今後、問題となってくるのは、高齢者世帯の中に、生活保護を受給できないと暮らしが成り立たない世帯が増えていく――ということでしょう。

前述の通り、生活保護受給世帯の約半分(55%)は65歳以上の高齢者世帯が占めているのが現状です。

生活保護は、8つの扶助から成り立ちますが、支給総額の内訳では、約半分(約50%)が医療扶助で、生活扶助が約30%、住宅扶助が15~16%、残りの5つの扶助が約5%といったところです。

厚労省の2021年度の「医療費の動向」によれば、1人当たり医療費は、75歳未満で23.5万円が、75歳以上だと93.9万円とおよそ4倍になります。

生活保護に占める65歳以上の高齢者の受給が増えるほど、医療費も増大する形になるのです。

いうまでもなく、生活保護制度は、憲法25条に定められた「健康で文化的な最低限度の生活」を保障し、その自立を促すものです。

働くことが可能な人は、働くことを求められます。

病気で働けない人は別ですが、役所のケースワーカーからは頻繁に訪問チェックされ、「○月までで打ち切るよ」などと不当に脅されることも少なくないようです。

しかし、この生活保護制度を受けることなく、「最低生活費」以下の生活を強いられている高齢者も多数存在します。

なぜでしょうか。

それは生活保護制度が、預貯金や生命保険、車や住宅などの資産が基本的にないことが、受給条件だからです。

したがって資産のある人は、それを売却して生活費に充ててからでないと支給条件に該当しません。

また、借金のある人も自己破産してからでないと受給できません。

ゆえに、現在すでに受給したくても受給できない高齢者が数多く存在するわけです(高齢者の約6割は自宅保有)。

また、生活保護の受給を申請すると、資産調査や三親等内の親族に援助ができないかどうかの「扶養照会」がいくのを嫌がる人も多くいます。

ゆえに生活保護申請を躊躇して、申請しない人も多くいるのが現状です。

貧困老後になる人は増える一方なのです。


年金減額は必至?生活保護費の圧縮、年金受給年齢アップで暗黒の近未来がやってくる

では、ここで「最低生活費」について、見ておきましょう。

「最低生活費」は、毎年厚労省が定めるものですが、地域によって等級があり(級地)、金額は異なります。これが「生活保護費の基準」ともなるのです。

概算で示すと、次のようになります(主に生活扶助と住宅扶助を加えた金額)。

・単身者………………………月額10万円~13万円
・夫婦2人世帯…………………月額15万円~18万円
・子供1人の母子世帯…………………月額17万円~20万円
・子沢山の母子世帯………………月額25万円~30万円

上記の母子世帯では、15歳未満の子供の数が多くなるほど、加算が上乗せされていきます。

こうした「最低生活費」の保証状況を見ると、国民年金や厚生年金を受給する平均的な高齢者夫婦と、あまり遜色がないように感じられる人もいるでしょう。

人によっては、現役時代に年金保険料を払い続けるよりも、老後は生活保護を受給したほうが、人生設計の効率がよいのではないか――などと思えてくる人もいるわけです。

しかし、現実はそう甘くはないのです。

裁判では軒並み敗訴となりましたが、2013年からの第2次安倍政権では、生活保護費を大幅にカットして、減額された国民から「減額は不当」だとして、訴訟を頻発させました。

この背景には、自民党が野党だった2012年末の衆院選で、「生活保護費1割カット」を公約に掲げて勝利したことと大いに関係があったからです。

自民党は虎視眈々と、年金受給年齢の引き上げや、年金額の減額、そして生活保護費の削減をこれからも狙っているのは間違いないのです。もちろん、財務省が社会保障費の削減に乗り気満々だからでもあります。

選挙では必ず投票に行き、本当の民意を反映させよう

円安で物価は高騰し、消費税率アップで可処分所得(自由に使えるお金)を圧迫し、国民生活は窮乏化しています。

しかし、これからも自民党が、次々と国民窮乏化政策を打ち出してくることは容易に予想されることでしょう。

アメリカの言いなりで、アメリカの兵器を買って、防衛費(軍事費)をGDPの1%(5兆円)から2%(11兆円)に引き上げなければならないからです。

また、政治献金をくれる大企業と富裕層に有利な税制を、これからも続けていくならば、消費税率アップで、現役時代の所得はますます圧迫され、老後に備えた貯蓄さえもままならなくなっていくのです。

つまり、「絶望の未来」が待っているのです。

生活保護も、年金も当てにならない暗黒の未来が広がってくるわけです。

このままでは、「長生き=地獄の老後」なのです。

自民・公明の連立政権の悪政に悩まされるのは、とにもかくにも選挙の時に、有権者の半分程度しか、投票に行かないことと大いに関係があるでしょう。

本当の民意が、政治に反映されないからに他なりません。

せめて国民の8割が投票に行くようになれば、日本の未来は少しでも明るい方向に変えられるはずでしょう。あるいは、日本もスイスやベルギーのように、罰金付きで「投票義務」の制度を導入したほうがよいのかもしれません。

政治に関心をもたない国の国民は、自分で自分の首を絞めていることに気がつかなければならないのです。

以上、今回はここまでといたします。次回の当メルマガでは、「食の安心安全が崩壊する!遺伝子組み換え食品の表示を理解不能にした理由は?ゲノム編集食品は表示制度もナシ!アメリカ政府の圧力に屈した恐るべき日本政府の闇」 というテーマでお届けいたします。スーパーで売られている食品の表示制度が、4月から変わっています。成分表示を見ても、何が何だかわからないような表記になったのです。なぜ、消費者を理解不能にさせるような変更がなされたのか。日本政府の闇をえぐっていきます。

Pocket
LINEで送る