「信じられないほど便利」…日本の「軽トラ」が米国でカルト的な人気を誇る理由
当初は、サイド・バイ・サイドと呼ばれるオフロード車両の購入を検討していた。だがある日、米農機具メーカー「ジョンディア」の車両の製品レビューを見ているときに、次のような気になるコメントを見つけた。
「軽トラを買えばいいのに」
軽トラについて調べはじめたモーガンはその数ヵ月後、南東部の街ニューポートまで車を走らせ、1997年製造のホンダのアクティをわずか2000ドル(約28万円)で購入した。検討していたジョンディア社の車両は、約3万ドル(約415万円)もしたのだ。
この選択に、モーガンはおおいに満足した。格安だっただけでなく、アクティは車幅が1.5メートル未満なので、モーガンの納屋のように普通のピックアップ・トラックでは入れない狭い場所にも入ることができた。
しかも、軽トラはサイド・バイ・サイドとは違い、公道を走ることもできる。「信じられないほど便利です」と言うモーガンは、最初の1台を購入してからほどなくしてそれを売り、もう1台軽トラを購入した。2台目の車両にはエアコンやダンパーを操作するスイッチもついていて、さらに使い勝手がよいという。
日本で米国向けに軽トラが製造されたことはない。多くが新車に求められるエアバックなどの安全装置を備えていないし、米国で輸入が禁止されている右ハンドルだ。しかしながら、製造から25年以上が経った車両はクラッシックカーと見なされ、輸入可能になる。
主に日本の軽トラを扱うニューヨークの輸入車ディーラー「HVNYインポート」のトッド・ガットーは、ここ数年で、300台以上の軽トラを地元企業に販売した。「てはじめに5台輸入したところ、7日間で完売したんです」と彼は言う。
販売先は農家だけでなく、建設業者や総菜販売店、テーマパークのレゴランドなど多様だ。「F-250(フォード社が販売する巨大なピックアップ・トラック)に8万5000ドル払うより、軽トラのほうがよいという人が大勢います」とガットは話す。
軽トラには、コンピューターや複雑な専用の部品を搭載した新車より、改造や修理が簡単にできるという利点もある。ウィスコンシン州やミネソタ州の北部では、軽トラに氷上走行用の装備をつけて使う。
一部の愛好家の間では、軽トラはカルト的人気を誇る。コネチカット州で整備士をしているある男性は、「MotoCheez」という名の自身のユーチューブで軽トラを取り上げはじめてから、視聴数が急上昇したと話す。
軽トラを規制する理由の一つが、安全性だ。交通量の多い高速道路で軽トラに乗れば、死亡事故を引き起こす可能性もあると、冒頭のモーガンも認める。
だが、軽トラファンのなかには、米国の自動車産業が日本製の安価な競合品を排除しようとしていると疑う人もいる。だとしたら、その動きはいまに始まったことではないが。