第5回 態度と説得
第5回 態度と説得
世論調査や街頭インタビューなど、私たちは日々の生活のなかで、しばしば態度を表明することが求められる。態度とは、人や事物、事象に対する評価反応であり、身の回りの多くのものに対して、私たちは何らかの態度を持っているのがふつうである。態度の構造や機能、説得に基づく態度変容、行動との一貫性など、態度にまつわる理論を概観する。
【キーワード】
態度の3成分、認知的不協和理論、説得的コミュニケーション、精緻化見込みモデル、態度と行動の一貫性
1.態度とは何か
(1)態度の定義
態度は,社会心理学における重要概念の一つである。 オールポートAllport,G.W. (1935)は,態度を「経験を通じて体制化された心理的あるいは神経生理的な準備状態であって,人間有機体がかかわりをもつすべての対象や状況に対する当該有機体の行動を方向づけたり変化させたりするもの」と定義している。
(2)態度の3成分
感情 + 認知 + 行動 → 実際の行動
(3)態度の機能
- 功利機能・・・利益を最大化し、損失を最小化する。
- 自己防衛機能・・・望ましくない現実から自我を守る
- 価値表出機能・・・価値観を表出することで、自己概念の妥当性を確認し、自損感情を高める
- 知識機能・・・周辺世界に関する情報を整理、体制化することで世界の理解を容易にする。
(4)認知的斉合性理論
(a)バランス理論
フリッツ・ハイダー(Heider,1958)
(b)認知的不協和理論
レオン・フェスティンカ゜ー(Festinger,1957)
世界の破滅を予言するカルト教団の教祖の予言がはずれたとき・・・予言を教義の中心におく宗教グループの社会心理学的な実証研究である。予言がはずれたとき、このグループの布教活動がかえって活発化するという逆説的な現象を検証する。
ベン・フランクリン効果があります。
この男を知っていますか?この紳士は敏腕の外交官です。
彼の時代の最もうまい社交テクニックはなんでしょうか。皆の家を訪ねて回ること?ベン・フランクリンは、どうすれば人に好かれるのかという秘密を明らかにしました。
私達のほとんどは、誰かに好かれる方法は、相手のために好意で何かをしてあげることで、「自分はあなたの事をわかっていて、信頼できる人間だ」と示すことだと考えています。
しかし、ベンの考えは違います。フランクリンには、強力な政敵がいたことがありました。そのライバルは、フランクリンの人生を不幸にしたいと思っていました。
しかしフランクリンは、彼と仲良くしたほうが有益だと考え、彼にどう承認されようか悩むのではなく、逆のアプローチをとりました。
彼は、ライバルが非常に珍しく貴重な本を持っていることを知っており、それを貸してくれないかとお願いしたのです。
数日後、彼はその本をお礼の手紙と一緒に返すと、驚いたことに、ライバルは彼の友達になってしまいました。フランクリンが利用したのは、認知的不協和として知られている有名な心理学の原理です。
認知的不協和とは、私たちの心に同時に2つの矛盾する感情を抱くことから生じる緊張のことです。
この緊張はとても不快であるため、私たちはこの矛盾を解決しようと無意識のうちに片方の感情をもう片方の感情に変更してしまいます。フランクリンの場合、ライバルは「フランクリンのことが嫌いだ」という感情を持っていました。
しかし、彼に一度好意を向けてしまうと、「私は私の好きな人のお願いしか聞きたくないと思っていたので、フランクリンのことが好きだ」という別の感情も同時に持つことになります。
これらの2つの感情が矛盾し、そして本を貸したという事実を消すことはできないので、結局ライバルはフランクリンへの悪意を消してしまう他なくなるのです。ベン・フランクリン効果の秘密は、人に好かれたければ、お願いをして助けてもらえ です。
・・・スリーパー効果とは、信憑性が低い情報源から得た情報であっても、時間の経過とともに情報源の信憑性を忘却してしまい、情報の内容だけが記憶に残ってしまうという心理現象で、別名「居眠り効果」「仮眠効果」とも呼ばれています。
スリーパー効果は、1940年にアメリカの心理学者であるカール・ホブランド氏によって提唱されました。由来は敵国に潜む工作員を指す「スリーパー」という言葉からきています。
1984年、ロバート・B・チャルディーニは『影響力の武器:なぜ、人は動かされるのか』という本を出版しました。それ以降、その本はマーケティング分野に強い影響を与えた本として幅広く称賛されてきました。コンバージョン最適化に関わる者にとっては必読書となっています。
この研究書のもっとも重要な項目の一つが「説得力の6原則」であり、その内容は次の通りです。
・好意
・返報性
・コミットメントと一貫性
・社会的証明
・権威
・希少性