第13回 消費者の購買意思決定過程

産業・組織心理学(’20)

Industrial and Organizational Psychology (’20)

主任講師名:山口 裕幸(九州大学教授)

【講義概要】
産業・組織心理学は、①組織に所属する人々の行動の特性やその背後にある心理、あるいは人々が組織を形成し、組織としてまとまって行動するときの特性について研究する「組織行動」の領域、②組織経営の鍵を握る人事評価や人事処遇、あるいは人材育成について研究する「人的資源管理」の領域、③働く人々の安全と心身両面の健康を保全し、促進するための方略について研究する「安全衛生」の領域、そして、④よりすぐれたマーケティング戦略に生かすべく消費者心理や宣伝・広告の効果を研究する「消費者行動」の領域からなる。本講義は、それらを全体として統合しつつ、産業・組織心理学の理論と知見を体系的に解説する。

【授業の目標】
①組織における人間行動の特徴とともに、組織体全体に発生する現象の諸特性について理解し、概説できる。
②人材の育成や開発のために必要となる人的資源管理のあり方について理解し、概説できる。
②職場で発生する安全衛生の問題に対して、その解決のための行動や心理学的支援の方法について理解し、概説できる。
④消費者の意思決定や行動の特性ならびに、効果的な宣伝やマーケティングのための心理学的知識について理解し、概説できる。

【履修上の留意点】
本科目を履修する前に「心理学概論(’18)」を履修することが望ましい。また、「社会・集団・家族心理学(’20)」と関連が深い。
※この科目は、心理と教育コース開設科目ですが、社会と産業コースで共用科目となっています。

第13回 消費者の購買意思決定過程

消費者が商品を購入する際の意思決定(どのような情報を収集してどのような基準で判断をして商品を買うのか?)についての理論を紹介する。

【キーワード】
購買意思決定モデル、購買前代案評価、購買後の心理的過程、選択ヒューリスティックス

執筆担当講師名:永野 光朗(京都橘大学教授)



店頭に並んでいる A から D までの 4 つの商品について表に示されている情報があるとする(数値は評価と信念について 5 段階で評定したものである)。Fishbein の多属性態度モデルに基づくと,このなかで購買される可能性が最も高い商品を①~④の選択肢の中から一つ選びなさい。

【問7画像】

① 商品 A
② 商品 B
③ 商品 C
④ 商品 D

 

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正解は①です。

【解説/コメント】

Fishbein の多属性態度モデルでは,

各商品についての信念(そのような商品属性をどの程度持っているのかの主観的評価)に商品属性の評価(それをどの程度重視するのか)を掛け合わせて合計をした数値(総和)がその商品への態度(好き-嫌い)を表すとされ,この数値が高いほどその商品が購買される可能性が高いとされます。

上記にしたがって表中の数値を基に計算すると,

商品 A は(+1)×(+2)+(+2)×(+1)+ 0 ×(-1)=+4 となり,

同様に計算を行うと商品

B は(+2)×(+2)+ 0 ×(+1)+(+1)×(-1)=+3,

商品 C は 0 ×(+2)+(+2)×(+1)+(+2)×(-1)= 0,

そして商品 D は(+1)×(+2)+(-1)×(+1)+(-2)×(-1)=+3 となり,

この中では商品 A が最も高く,この商品が購買される可能性が高いということになります。

ただし数値は商品への好意的態度を示すものであり,行動を予測するための数値ということになります。また消費者が商品を買う場合にこのような厳密な計算を行っているのではなく,あくまでも消費者が商品選択を行う場合のプロセスを論理的に表現したものがこのモデルの持つ意味ということになります。


商品に対する関与と購買行動の関連性について述べたアサエル(Assael)の理論にしたがうと「自宅の居間に敷くカーペットを買う」場合は,どのような購買行動の類型になると考えるか。①~④のうち最もよく該当するものを一つ選びなさい。

① 複雑な購買行動

② 不協和低減型購買行動 正解です。

③ バラエティ・シーキング型購買行動

④ 習慣的購買行動

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正解は②です。

【解説/コメント】

アサエル(Assael,2004)は製品の類型によって消費者の購買行動が異なるとし,「関与(involvement)」という概念を取り入れたうえで製品を 4 つに類型化しています。関与は「ある対象,事象,活動に対して消費者が知覚する重要性や関連性」と定義されます。アサエルは「関与水準(消費者が製品に対して持つ重要性や,こだわり,思い入れの強さ)」「ブランド間の知覚差異(消費者がそのカテゴリー内のブランドの違いを知覚できる程度)」という 2 つの次元を設定しました。それらを組み合わせて 4 パタンの購買行動を定義しました。①~④の選択肢がこれに該当します。
このうち②「不協和低減型購買行動」は,関与水準が高くブランド間の知覚差異が小さいときには消費者は不協和低減型の購買行動をとるというものです。居間に敷くカーペットは,一般に高価格で日常生活に密着する重要なアイテムであり高い関与度を持ちますが,極めて高価なものと安価なものとの違いを除けば,実質的な商品間の差を知覚や体感として感じにくい商品といえます。このような製品では自分の選択が正しいという確信を持つことが難しく,購買後に認知的な不協和を覚える可能性があります。このため商品選択に際しては購買後の不協和の生起を回避できる行動をとりやすくなります。したがって,②「不協和低減型購買行動」が最も該当するものといえます。たとえばカーペットの専業メーカーとして定評がある会社の製品であれば安心といった考えが選択の基準となるでしょう。

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