第8回 子育て

第8回 子育て

進化論的には、子育ては親から子への投資として理解される。子育てをあえて親の投資と考えることで何がわかるのか。第8回の講義では、進化論から考える子育てについて解説する。

【キーワード】
親子の対立、親の投資、協同繁殖、ベビースキーマ、養子


1.親子の関係

(1)親子の対立

ロバート・トリヴァース

ロバート・トリヴァースは、『新しい人類の起源』や『ヤノミアの島』などの著書で知られる人類学者ですが、彼は自らの家庭においても、親子関係に葛藤を抱えていました。

彼の父親はイギリス人で、第二次世界大戦中にスリランカ(当時はセイロン)に駐在していた軍人でした。トリヴァースは幼少期をスリランカで過ごし、父親との関係は非常に疎遠でした。後にトリヴァースが父親の遺品を整理していた際には、父親からの手紙や写真などがほとんど見つからなかったと言われています。

一方、トリヴァースの母親はセイロン出身のタミル人で、トリヴァースが5歳の時に彼女は自殺をしました。トリヴァースはこの事件がトラウマとなり、後に自らもうつ病を発症することになります。

トリヴァースは自らの家庭で経験した葛藤を元に、家族や親子関係に関する研究を行いました。彼の著書『親類と社会進化』では、家族と社会の進化の関係について論じています。また、『私たちの子育ての歴史』では、人類がどのように子育てを行ってきたかについて考察しています。

親子の対立  親子の対立(おやこのたいりつ)あるいは親子間コンフリクト(英: Parent-offspring conflict)は、親子間で最適な生存戦略が異なるために起きる進化的対立のことである。両親は子の数を最大化するようつとめる事で自身の適応度を増大させることができるが、子は兄妹と争い親の投資をより多く独占しようと努めることで自身の適応度を高めることができる。この理論は血縁選択説の理論的拡張として1974年にロバート・トリヴァースによって提案され、利己的遺伝子としてより一般化され、観察されている多くの生物学的現象に適用されている[1]。親子の葛藤、親子間闘争などとも訳され定訳はない。

(2)離乳をめぐる対立

親の投資(parental investment)

(3)共同繁殖パートナーとしての子

共同繁殖(cooperatinve breeding):親意外の個体が子育てを手伝うような子育てシステムです。

父親のサポートと、年長者のヘルパーとして手伝いをする。

2.子育ての至近要因

(1)ベビースキーマー

コンラート・ローレンツ コンラート・ローレンツは、オーストリアの動物行動学者であり、動物の行動と進化に関する先駆的な研究で知られています。彼は、「人工孵化」という実験で、ヒナが最初に見たものを母親と認識する「刷り込み」現象を発見しました。また、動物の行動には本能的な要素があることを示し、動物が環境に適応するために進化的に獲得した行動パターンがあることを提唱しました。彼は1963年にノーベル生理学・医学賞を受賞し、動物行動学に多大な貢献をしました。

(2)「投資」という視点

繁殖成功度を高くする投資傾向が進化するはずです。

「種の保存」という考え方は間違っている。

第4回 進化論は利他行動を説明できるか

子供が繁殖可能年齢まで成長できるのは、子供の健康や親の側に投資を行う資源・能力があるかどうかも重要です。

嬰児殺し(えいじごろし)とは? 意味や使い方 – コトバンク (kotobank.jp)

第5回 性と進化

(3)父性の不確実性と父親の子育て

パートナーと共同で子育てをする時期に移行すると、テストステロン濃度が下がることが知られている。

3.子育てと血縁淘汰

(1)継子と虐待リスク

(2)養子の謎


「人が人を殺すとき ー 進化でその謎をとく」 だれが、だれを、なぜ殺すのか。世界で初めて、進化心理学による殺人研究。だれが、だれを、なぜ殺すのか。人間の心理特性とそれらが暴走することで起こる殺人を事例や統計をあげて詳細に分析し、人と人との究極的な葛藤の姿を明らかにする。進化心理学による初の殺人研究。マーティン デイリー (著), マーゴ ウィルソン (著), Martin Daly (原名),

このタイトルは、イギリスの生物学者であるRichard Dawkins(リチャード・ドーキンス)が提唱する進化論の観点から人間の殺人行為を解明しようとする試みを表しています。ドーキンスは、進化論的な観点から、人間が殺人を行う理由を解明しようとしました。

彼は、人間が社会的動物であること、競争原理が人間の行動に影響を与えること、および遺伝的な影響が人間の行動に関与することを指摘しています。また、進化のプロセスにおいて、競争原理が生き残りを決定することがあるため、人間の殺人行為もこの競争原理に基づくものである可能性があると述べています。

ただし、ドーキンスは殺人が適切であるというわけではなく、むしろ進化論の観点から、殺人行為を抑制することが重要であると主張しています。つまり、人間が進化のプロセスによって競争原理に従う傾向があるとしても、社会的ルールや倫理観を持つことによって、殺人行為を抑制することができると考えています。

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