第4回 認知と感情

第4回 認知と感情
感情は、長らくの間、認知と対立し妨害するものとして捉えられてきた。しかし近年では、むしろ感情が認知とどのように相互作用するかに焦点を当てた研究が増えてきている。また感情は、無益なものではなく、むしろ人間にさまざまなシグナルを送り、生存を高める機能を持つものだという考え方も一般的になってきた。感情の生起に関する主要な理論と、認知との関わりについて概観するとともに、感情の働きや適応的価値についても考察する。
【キーワード】
情動、気分、感情、情動二要因理論、気分一致効果、社会的感情


第4回 認知と感情

1.感情とは何か

(1)感情研究の興隆(物事が盛んにおこり、勢いがふるうこと。)

(2)情動、気分、感情

感情(affect)
  • 情動(emotion) ・怒り、恐怖、喜びなど短期的ではあるが強度が強い ・その感情を引き起こす原因が明確なことが多い
  • 気分(mood) ・強度が弱いものの、長期にわたって持続 ・何となく楽しい、悲しいといった背景的感情で原因は不明確

(3)感情の生起プロセス

(a)感情の末梢起源説

感情の末梢起源説(ジェームズ-ランゲ説)
  • ウィリアム・ジェームズ「われわれは泣くから悲しい、殴るから怒る、震えるから恐ろしい」
  • 環境刺激が引き起こした身体変化が感情経験として知覚される。

(b)感情の中枢起源説

感情の中枢起源説(キャノン-バート説)
  • 視床は、環境刺激が感情的性質を持つものかどうかを弁別する。
  • 感情的なものであれば大脳皮質に送られ、感情経験が生じる一方で、視床下部を経由して身体反応が引き起こされる

(c)情動二要因理論

シャクター&シンガー(Schacter&Singer,1962)

情動二要因理論
  • 感情経験は、生理的な喚起とその認知的な解釈(ラベルづけ)の2つが必要

誤帰属

つり橋効果:吊り橋を渡った時のような状況では、脳内にドーパミンやアドレナリンが放出され、交感神経が刺激されて興奮状態となります。心臓は脈拍が上がりドキドキします。恋愛のときもこれと同じことが脳内で起きています。現実の状況はまったく違うのですが、脳内では同じ状況になっているので、脳が恐怖心と恋心を勘違いしてしまうんです。

生理的喚起           + 認知的解釈      → 感情

つり橋を渡ることによるドキドキ  ・原因をつり橋に帰属   → つり橋に対する恐怖

つり橋を渡ることによるドキドキ  ・原因を女性に帰属    → 女性に対する好意

(d)顔面フィードバック理論

顔面フィードバック理論
  • 表情筋の変化が脳にフィードバックされることで、感情が経験される。

2.認知と感情の相互作用

(1)気分一致効果

気分一致効果
特定の気分が生じると、その気分の感情価(ポジティブ・ネガティブ)に一致する情報処理が促進される現象

対人認知をする側の気分が、他者の評価に影響すると言える。

(2)ポジティブ-ネガティブ非対称性(PNA)

ポジティブ-ネガティブ非対称性(PNA:positive-negative asymmetry)

気分一致効果はポジティブな気分の場合のほうが顕著

ポジティブ → 気分維持動機 → 気分の増幅

ネガティブ → 気分修復動機 → 気分の緩和

(3)気分と情報処理方略

シュワルツ(Schwarz,2002)認知的チューニング仮説

ポジティブ → 周辺環境は良好 → ヒューリスティックな情報処理

ネガティブ → 周辺環境に問題 → システマティックな情報処理

ポジティブ:直感的でヒューリスティックな情報処理方略

ネガティブ:分析的なシステマティックな情報処理方略

 

3.感情の機能的価値

進化心理学とは、進化論に基づいて、人の心の働きが進化的適応の産物であるという認識に立った心理学のことである。(Barkow,Cosmides&Tooby,1992)

感情ア─ジ理論(戸田,1992):ア─ジ(urge)とは、人間を強く駆り立てる力のことで、このア─ジが存在することによって、人間は周辺環境の状況に応じた適応的な行動を選択することができる。

ソマティック・マーカー仮説(ダマシオ:Damasio,1994):感情は、現代においても、適切な判断や意思決定を導くもである。

シャーデンフロイデ(人の不幸は蜜の味)シャーデンフロイデSchadenfreude)とは、自分が手を下すことなく他者が不幸悲しみ苦しみ、失敗に見舞われたと見聞きした時に生じる、喜び、嬉しさといった快い感情

ロザン×中野信子「シャーデンフロイデは、社会を守るために必要な感情なんです

 

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