第2回 知覚・認知心理学の研究法 -「考えること」をいかに科学するか-

知覚・認知心理学(’19)

Psychology of Perception and Cognition (’19)

主任講師名:石口 彰(お茶の水女子大学名誉教授)

【講義概要】
人間は「考える」能力を持っています。考える能力には、大切な事柄を記憶する、問題を解く、どちらが良いか判断する、旅行の計画を立てるなど、意識的に考える能力のほか、見る、聞く、驚くなど、無意識的に考える能力があります。この「考えること」が、広い意味での、認知機能なのです。知覚・認知心理学は、このような、「考えること」の科学です。この講義では、認知の低次過程といえる感覚・知覚等の無意識的な機能から、問題解決や判断・意思決定などのより高次で意識的な認知機能のしくみを解説します。

【授業の目標】
知覚・認知心理学は、実証科学の一員です。実証科学とは、実験を通して得られた事実(エビデンス)に基づいて、仮説やモデルを検証する科学です。この授業では、単に、人間の認知に関する現象や事実を体験し理解するだけでなく、それらの背後に潜む人間の認知のメカニズムを、いかに実証するか、その方法論も併せて理解することが、目標となります。

【履修上の留意点】
履修にあたって、予備知識は特に必要としませんが、高校の生物学の知識があると、理解がより深まると思います。ただし、実証科学の一員として、論理的な思考は、不可欠です。レポートを書くうえでも、論理的なストーリー展開が、求められます。

 

 

第2回 知覚・認知心理学の研究法
-「考えること」をいかに科学するか-

知覚・認知心理学は、実証的な科学である。実証という意味は、データを基に、自ら立てた仮説を検証していくことである。今回は、「考えること」を科学する実証的な方法として、行動実験的方法、脳神経生理学的方法、神経心理学的方法等を説明する。

【キーワード】
行動実験、脳神経生理学、神経心理学、二重解離

執筆担当講師名:石口 彰(お茶の水女子大学名誉教授)
放送担当講師名:石口 彰(お茶の水女子大学名誉教授)

科学する。
言葉が「科学する」に変わると、何が思い浮かぶだろう?
科学を分野ではなく、行為としてとらえると、何のための行為だろうか?
端的に言うと、「科学する」は、「さぐる」こと「分かる」ことだと思うのだ。
そこにある構造や法則を整理し、関連付け、理解していく。
そうして世界観のようなものを鮮明にしていくことが、科学の営みではないだろうか。
https://beyondarchitecture.jp/magazine/urban-science/outline/us01/

刺激(stimulate)の強度 https://www.try-it.jp/chapters-15447/sections-15497/lessons-15513/point-3/
https://www.sankyobo.co.jp/dicsig.html
サブリミナル効果(閾下知覚)とは?映画やCMの例でわかりやすく解説! https://theory.work/terms-subliminal-effect/
閾下知覚(読み)イキカチカク https://kotobank.jp/word/%E9%96%BE%E4%B8%8B%E7%9F%A5%E8%A6%9A-431186

スチーブンスのベキ法則
精神物理学において物理的刺激の実際の大きさとそれを知覚する際の強さの関係を表す法則として提案されたものである。

眼球運動
眼球運動とは – コトバンク https://kotobank.jp/word/%E7%9C%BC%E7%90%83%E9%81%8B%E5%8B%95-1156790
http://www.nara-sfj.or.jp/wp/wp-content/uploads/2014/03/71159dcb55d2eb58f1982ce68966c678.pdf
眼球運動 [JSME Mechanical Engineering Dictionary] https://www.jsme.or.jp/jsme-medwiki/17:1002384

事象関連電位
事象関連電位 – 脳科学辞典
事象関連電位 – Wikipedia

機能的MRI 機能的磁気共鳴画像とは、磁気共鳴画像 (magnetic resonance imaging; MRI)を用いて生体の脳や脊髄を一定時間連続的に撮像し、脳活動(神経活動とシナプス活動等の総和)と相関するMRI信号の変動を非侵襲的に計測する技術である。2021/10/28

脳磁図 脳磁図 (MEG)(のうじず、英: Magnetoencephalography)は、脳の電気的な活動によって生じる磁場を超伝導量子干渉計 (SQUIDs) と呼ばれる非常に感度の高いデバイスを用いて計測するイメージング技術である。 この計測法は研究面、医療面の両方に利用される。

単一解離 「二重乖離」 とは,例えば,A という部位が損傷された場合,a という機能が障害を受け,一方,B という部位が 損傷された場合に b という機能が損傷される場合 が存在すれば,aという機能と, b という機能は「二 重乖離」すると判断される.
【単純乖離(single dissociation)と二重乖離 (double dissociation)について】

神経心理学を学ぶと最初の方で必ずと言って良いほど二重乖離(double dissociation)という用語を見聞きするかと思います。二重乖離は特定の脳領域の機能について検討する際に非常に有効な方法です。ここでは二重乖離とそのベースとなる単純乖離(single dissociation)の概念について概説します。

★まず単純乖離について
二重乖離があるならば「一重」もあります。これは単純乖離(single dissociation)と呼ばれ、二重乖離を考える際の基礎になります。以下、二つの例を取り上げます。

例1)脳領域Xを損傷した患者さんに二つの課題を行った時に、課題1の成績は良好にも関わらず、課題2の成績が著しく低下していた場合。

この場合、脳領域Xは課題2に関わっている(損傷Xは課題2の成績低下を引き起こすため)と推測することができます。

しかしながら、この結果だけだと課題2が難しすぎた可能性も否定できません。

例2)脳領域Xを損傷した患者さんと脳領域Yを損傷した患者さんそれぞれに課題1を行ってもらい、脳領域Xの損傷によって課題1の成績低下が認められない一方、脳領域Yの損傷では課題1の成績低下が認められた場合。

この場合、脳領域Yは課題1で必要とする高次脳機能と関わっている一方、脳領域Xは課題1と関わっていなさそうだということが予想されます。

しかしながら、課題1の成績低下が、基礎的な視覚機能などの要素的機能や知能のような一般的な機能の障害によって生じた可能性も否定できません(損傷Yがこうした要素的もしくは一般的な機能の障害を引き起こした可能性を想定しています)。

こうした問題を解決するために用いられるのが二重乖離の概念です。

★二重乖離について
一言でいえば、真逆の単純乖離が損傷Xと損傷Yで見つかることです。これが見つかると、それぞれの領域が異なる機能に関わっていると言えます。

例)脳領域Xの損傷→課題2のみ成績低下かつ、
脳領域Yの損傷→課題1のみ成績低下

この場合、脳領域Yの損傷では課題2の成績低下が認められないので、単純乖離では否定しきれなかった「課題2が難しすぎた可能性」や「要素的機能や一般的な機能の障害がある可能性」を否定することができます。

こうしたことから二重乖離の原則が重宝されています。

二重乖離の方の棒グラフと折れ線グラフは同じ意味です。折れ線グラフを使う方が一般的なようです。

二重乖離の概念は神経心理学に限らず、様々な応用が利きますので、是非ご自身の研究に活用してみてください。

以下、参考文献です。
大槻美佳先生による解説「脳機能からみる言語と身体」
https://www.jcss.gr.jp/…/procee…/pdf/JCSS2015_OS02-2.pdf

島田睦雄先生による解説(神経心理学のみちしるべ第Ⅰ部第2章)
http://www1.odn.ne.jp/~aag13140/ 表示を縮小

 

 

 

失語症

【医師監修】失語症ってどんな病気?症状や原因リハビリ方法までイラスト付きで紹介! https://www.cocofump.co.jp/articles/byoki/16/

失語 – 09. 脳、脊髄、末梢神経の病気 – MSDマニュアル家庭版

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