第13回 クリティカルに考える -信じる心、見抜く心-

知覚・認知心理学(’19)

Psychology of Perception and Cognition (’19)

主任講師名:石口 彰(お茶の水女子大学名誉教授)

【講義概要】
人間は「考える」能力を持っています。考える能力には、大切な事柄を記憶する、問題を解く、どちらが良いか判断する、旅行の計画を立てるなど、意識的に考える能力のほか、見る、聞く、驚くなど、無意識的に考える能力があります。この「考えること」が、広い意味での、認知機能なのです。知覚・認知心理学は、このような、「考えること」の科学です。この講義では、認知の低次過程といえる感覚・知覚等の無意識的な機能から、問題解決や判断・意思決定などのより高次で意識的な認知機能のしくみを解説します。

【授業の目標】
知覚・認知心理学は、実証科学の一員です。実証科学とは、実験を通して得られた事実(エビデンス)に基づいて、仮説やモデルを検証する科学です。この授業では、単に、人間の認知に関する現象や事実を体験し理解するだけでなく、それらの背後に潜む人間の認知のメカニズムを、いかに実証するか、その方法論も併せて理解することが、目標となります。

【履修上の留意点】
履修にあたって、予備知識は特に必要としませんが、高校の生物学の知識があると、理解がより深まると思います。ただし、実証科学の一員として、論理的な思考は、不可欠です。レポートを書くうえでも、論理的なストーリー展開が、求められます。

第13回 クリティカルに考える
-信じる心、見抜く心-

われわれが共有している事実はほんの一部にすぎない。互いが誤解なく理解し合うには、様々な場で正しく「推論」することが求められる。すなわち、情報を鵜呑みにせず合理的に推論すること(=クリティカルシンキング)が重要になる。クリティカルシンキングについて、事例を交えながら解説する。また、その育成に知覚・認知心理学の知見がどのように活かせるかを考える。

【キーワード】
クリティカルシンキング、内省、メタ認知、スキーマ、推論、認知バイアス、ステレオタイプ、21世紀型能力

執筆担当講師名:池田 まさみ十文字学園女子大学教授


第12回 推論 -論理的に考える、一から十を知る-

人間の脳は、自動的で処理が速い「システム1」と、意識的で処理の遅い「システム2」の2つのモードで思考を処理するという理論

心理学・行動経済学の分野では、「思考には早い思考と遅い思考の2つのモードがある」という理論がある。
心理学者Keith Stanovichキース・スタノヴィッチRichard Westリチャード・ウェストが2000年に発表した論文で、2つのモードにシステム1システム2の名称が考案され、心理学の分野で定着した。しかし、呼び方は分野や研究者によって様々であり、行動経済学の分野では、自動システムと熟慮システムなど理解しやすさを重視した名前がつけられる場合もある。
学術的には、2つの思考モードを合わせて二重過程理論、二重システム理論(Dual process theory)と呼ばれる。
ノーベル経済学賞を受賞した行動経済学者であるDaniel Kernemanダニエル・カーネマンが、この理論を発展させた一般向けの書籍「ファスト&スロー」を2011年に出版し、2つの思考モードは広く知られるようになった。

ヒューリスティック

ヒューリスティック(heuristic)とは、「発見的手法」という意味の心理学用語で、必ずしも正しい答えではないが、経験や先入観によって直感的に、ある程度正解に近い答えを得ることができる思考法です。 「経験則」と同義であるとも言われています。

思考には、共通するクセがある。・・・・・・・認知バイアス

・コイン投げ・・・・代表性ヒューリスティックス

・誕生日が同じ確率・・・・代表性ヒューリスティックス

・rが最初にくる単語・・・・利用可能性ヒューリスティックス

確率の定義と確率判断 → 第11回 判断と意思決定-人間は合理的か-

・ギャンブラーの錯誤

・信念更新、ベイズ規則

フレーミング効果 → 第11回 判断と意思決定-人間は合理的か-

錯思コレクション

本サイトのタイトル「錯思」を不思議に思った方もいらっしゃるかもしれません。錯思は、人のモノの見え方の特徴である「錯視」をもじってつけました。錯視の生じ方自体は個々人で異なるように、考え方も百人百様です。しかし、錯視と同様、そこには人に共通する考え方や捉え方の特徴があります。その特徴のひとつが「認知バイアス」です。つまり、ここでの錯思とは認知バイアスのことを指します。

クリティカルシンキング

クリティカルシンキングとは論理的・構造的に思考するパターンのことを指し、自分が普段無意識にとっている行動や考え方を意識化し、客観的かつ分析的に振り返るという意味で用いられます。組織でクリティカルシンキングを活用することで、主体的解決者として、計画立案や問題解決そして意思決定の基盤・技術を築くことができます。また分析、推論、伝達といったクリティカルシンキング・スキルは円滑なコミュニケーションにおいても重要です。

クリティカルシンキングとロジカルシンキングの違い
クリティカルシンキングと類似した概念の一つに、ロジカルシンキング(論理的思考)があります。ロジカルシンキングは、推論を積み重ねて結論を得る思考プロセスのことです。クリティカルシンキングでは論理的な(ロジカルな)正しさだけでなく、物事の妥当性を含めて考えます。

信じる心・・・・・推論とスキーマの関係

スキーマの機能的特徴

1.一致するる情報に注意を向ける

2.一致しない情報を受け入れない

3.一致する情報の記憶が促進される

4.一致するように記憶を歪ませる

スキーマ(知識の枠組み)について

「確かに見た」・・・・・個人の経験によって形成される辞典

「いったんスキーマが形成されると、時として、それはあたかも生きていて、非常に強い生存本能をもっているかのように見えることがある。スキーマは、永続的で強固な生命体となり、われわれはそれを通してさまざまなことを経験するのだ。」Zchemaister

見抜く心

21世紀能力  21世紀能力とは、グローバル化やICT(情報通信技術)化が今後いっそう進むことを見すえて、将来をになう子どもたちが、生き抜いていくために必要な力、つまり「生きる力」に必要な能力を整理したものです。 21世紀能力は、基礎力・思考力・実践力の3層構造になっています。

ニーチェ

「各人がそれぞれ自分自身にもっとも遠いものである」

「最も見えにくいのは自分自身である。ということは、自分を他者のほうから見る術をみがく必要がある。だからまた、自分がほんとうは何も知らないということを知っている人がいちばん賢いということになる。


【考えてみよう】

クリティカルに考えることが出来なかった場合、どのような問題が起きるだろうか。身のまわりの様々な場面を想定して考えてみよう。

 

災害時の逃げ遅れについて

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