第1回 産業・組織心理学の歴史とテーマ

産業・組織心理学(’20)

Industrial and Organizational Psychology (’20)

主任講師名:山口 裕幸(九州大学教授)

【講義概要】
産業・組織心理学は、①組織に所属する人々の行動の特性やその背後にある心理、あるいは人々が組織を形成し、組織としてまとまって行動するときの特性について研究する「組織行動」の領域、②組織経営の鍵を握る人事評価や人事処遇、あるいは人材育成について研究する「人的資源管理」の領域、③働く人々の安全と心身両面の健康を保全し、促進するための方略について研究する「安全衛生」の領域、そして、④よりすぐれたマーケティング戦略に生かすべく消費者心理や宣伝・広告の効果を研究する「消費者行動」の領域からなる。本講義は、それらを全体として統合しつつ、産業・組織心理学の理論と知見を体系的に解説する。

【授業の目標】
①組織における人間行動の特徴とともに、組織体全体に発生する現象の諸特性について理解し、概説できる。
②人材の育成や開発のために必要となる人的資源管理のあり方について理解し、概説できる。
②職場で発生する安全衛生の問題に対して、その解決のための行動や心理学的支援の方法について理解し、概説できる。
④消費者の意思決定や行動の特性ならびに、効果的な宣伝やマーケティングのための心理学的知識について理解し、概説できる。

【履修上の留意点】
本科目を履修する前に「心理学概論(’18)」を履修することが望ましい。また、「社会・集団・家族心理学(’20)」と関連が深い。
※この科目は、心理と教育コース開設科目ですが、社会と産業コースで共用科目となっています。

各回のテーマと授業内容
第1回 産業・組織心理学の歴史とテーマ

我が国と諸外国における産業・組織心理学の成立過程とテーマについて概説する。

【キーワード】
科学的管理法、ホーソン研究、オープン・システム、組織行動、人的資源管理、メンタルヘルス、安全管理、消費者行動


【19世紀末〜20世紀初頭の組織観】

人間を組織という大きな器械の部品のようにとらえる考え方が存在した。それは、報酬と罰でコントロールできると考える単純な人間観も併せて垣間見ることができる。


第1回 産業・組織心理学の歴史とテーマ

我が国と諸外国における産業・組織心理学の成立過程とテーマについて概説する。

【キーワード】
科学的管理法、ホーソン研究、オープン・システム、組織行動、人的資源管理、メンタルヘルス、安全管理、消費者行動

第2回 採用とアセスメント

採用とアセスメントをテーマに取り上げ、就職活動では何が問われているのかについて考える。

【キーワード】
採用選考、KSAOs、P-J fit、P-O fit、アセスメント技法、面接、職務分析

第3回 キャリアの展開と育成

キャリアの展開と育成をテーマに取り上げ、人生をどう歩むかについて考える。

【キーワード】
キャリア、キャリア発達、キャリアアンカー、キャリアマネジメント、人材育成、キャリアカウンセリング、社会化

第4回 ワークモチベーション

各成員が高い成果を実現するために必要不可欠なワークモチベーションに関わる理論を概説し、ワークモチベーションをマネジメントするための方法について考える。

【キーワード】
ワークモチベーション、内発的モチベーション、目標設定理論、期待理論、組織公正理論、職務特性理論、ジョブ・クラフティング

第5回 人事評価

人事評価をテーマに取り上げ、公正な評価のために工夫すべきことについて検討する。

【キーワード】
人事評価、パフォーマンス、成果主義、評価のエラー、評価者訓練、評価プロセスへの反応

第6回 リーダーシップ

管理者が、メンバーを動機づけ目標達成へと導くために必要とされるリーダーシップについて概説する。また、リーダーがダークサイドに陥る条件について検討する。

【キーワード】
リーダーシップ、PM理論、コンティンジェンシー・アプローチ、変革型リーダーシップ、サーバント・リーダーシップ、リーダーシップのダークサイド

第7回 職場の対人関係と組織文化

職場の対人関係にみられる特徴、および集団・組織のレベルで現れる心理学的な特性を説明する。それらが及ぼす影響を踏まえて、職場で効果的に協働するために必要なことについて考える。

【キーワード】
コンフリクトマネジメント、集団規範、心理的安全、チームワーク

第8回 組織の情報処理とコミュニケーション

組織の情報処理とコミュニケーションをテーマに取り上げ、正確な情報共有と組織の的確な判断のために何が必要かを考える。

【キーワード】
コミュニケーションのプロセス・モデル、対人コミュニケーション、意味解読コード、高文脈コミュニケーション、葛藤調整、会議、情報共有、集団意思決定、集団創造性、ナレッジマネジメント、インターネット

第9回 仕事の能率と安全

仕事の能率と安全に関わる人間の特性、および産業現場で取り組まれている方策について概説する。仕事の生産性と安全性を両立するために何が必要かを考える。

【キーワード】
作業研究、ヒューマンエラー、不安全行動、安全管理、安全文化

第10回 職場のストレス

職場で働く際に経験する疲労やストレスをテーマに取り上げ、人が健康に働くために必要な条件や働き方の改善に求められることについて考える。

【キーワード】
疲労、ワークロード、ストレス、ソーシャルサポート、ストレスチェック、ワーク・ライフ・バランス

第11回 職場のメンタルヘルス対策

組織で働く労働者のメンタルヘルスの基本的対策を紹介するとともに、昨今メンタルヘルスを含めた様々な問題に対応する施策として注目されているEAP(従業員支援プログラム)について解説する。

【キーワード】
メンタルヘルス、1次予防、2次予防、3次予防、EAP(従業員支援プログラム)、ストレス

第12回 消費者行動とマーケティング

消費者行動をテーマに取り上げ、消費者心理の基礎理論を紹介するとともに、宣伝やマーケティングにどのように生かされているかを解説する。

【キーワード】
購買行動、ブランド、マーケティング、態度、質的分析、宣伝

第13回 消費者の購買意思決定過程

消費者が商品を購入する際の意思決定(どのような情報を収集してどのような基準で判断をして商品を買うのか?)についての理論を紹介する。

【キーワード】
購買意思決定モデル、購買前代案評価、購買後の心理的過程、選択ヒューリスティックス

第14回 消費者の購買意思決定における非合理性

消費者の意思決定は人間が持つ認知的バイアスや感情に左右されて、時には合理性を欠いた形で行われることがある。その特徴を行動経済学を参考にしながら解説する。

【キーワード】
購買意思決定、非合理性、行動経済学、認知的バイアス

第15回 産業・組織心理学の実践と応用

産業・組織心理学の学問が、組織現場でどのように活用され、応用されているかを解説する。また、産業・組織心理学の今後の展望についても考える。

【キーワード】
ワーク・ライフ・バランス、働き方改革、女性の就労、組織の社会的責任(SCR)、コンプライアンス、少子高齢化、多様性社会、世代間継承、ソサエティ5.0(Society5.0)

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