発達科学の先人たち(’16)

発達科学の先人たち(’16)

The Pioneers of Human Development Studies (’16)

主任講師名:岩永 雅也(放送大学長)、星 薫(放送大学客員准教授)

【講義概要】
ともに発達科学に属する心理学と教育学には、専門的な学習へと進むにあたって必要となる基礎的知識に関して共通する部分が極めて多い。そうしたいわば学習の土台となる考え方や知識のエッセンスは、その多くがそれぞれの学の歴史に一時代を画す”巨人たち”の業績の中に凝集されている。それらは現代でもなお輝きを失わず、われわれに多くの重要な示唆を与えてくれる。そうした”巨人たち”の業績について、2010年度には「教育と心理の巨人たち」を開講した。それを踏まえ、この「先人たち」は、「巨人たち」の続編として、「巨人たち」で取り上げなかったアリストテレスの心理学的側面やダーウィン、ヴント、貝原益軒、デュルケム、シュタイナー、ピアジェなどといった心理学と教育学に関わる”先人たち”を、1回に1名ずつ取り上げ、その代表作を精読した上で、学史上の意義とそれぞれの学問への貢献、さらには今日的意味等を理解していくことをねらいとしている。心理と教育に関心を持つすべての学習者の履修を期待したい。

【授業の目標】
今日、社会生活のあらゆる局面で著しい本離れ、文字離れが指摘されている。遠隔高等教育もその例外ではない。そこには、多様な情報や知識がネット上で誰でもごく簡便に入手できるという時代状況がある。ネット上の手軽な情報で十分理解できたような気になっていることも決して少なくない。しかし、そうした時代だからこそ、大学教育には本物の知識、本物の学問体系の提供が求められているのである。本授業では、「輪読ゼミ」を疑似体験することで、学生が学術書の精読の技法と意味を体得することをその目的とする。

【履修上の留意点】
関連する科目名:「心理と教育へのいざない」

各回のテーマと授業内容

第1回 発達科学と先人の足跡

発達科学とは何かについて論じた上で、発達科学分野で大きな業績を残した本講義で取り上げる先人たちについて概略紹介する。

【キーワード】
発達科学、発達、成熟、心理学、教育学

執筆担当講師名:岩永 雅也(放送大学長)
星 薫(放送大学客員准教授)
放送担当講師名:岩永 雅也(放送大学長)
星 薫(放送大学客員准教授)

第2回 アリストテレス:『心とは何か』

アリストテレスの『心とは何か』を読み、心理学のルーツともいえる思想と、現代の心理学との関係性について考える。

【キーワード】
プシュケ、形相と質料、可能態と終局態、理性

執筆担当講師名:森 津太子(放送大学教授)
放送担当講師名:森 津太子(放送大学教授)

第3回 貝原益軒:『和俗童子訓』

日本のアリストテレスとも称される貝原益軒の儒教思想に基づく体系的教育書である『和俗童子訓』を読み、江戸前期~中期の時代背景とともに、その意義を考える。

【キーワード】
朱子学、理気二元論、姑息の愛、随年教法、『女大学』

執筆担当講師名:岩永 雅也(放送大学長)
放送担当講師名:岩永 雅也(放送大学長)

第4回 ダーウィン:『人及び動物の表情について』

進化論の考えを世に知らしめることとなったダーウィンの『人及び動物の表情について』を読み、進化論と、ダーウィンの研究の心理学への貢献について考える。

【キーワード】
進化、表情の一般原理、人間と動物の連続性

執筆担当講師名:森 津太子(放送大学教授)
放送担当講師名:森 津太子(放送大学教授)

第5回 ヴント:『民族心理学』

現代心理学の父ともされるヴントは、20年の歳月をかけて『民族心理学』を著している。今回はこの本を読むことで、ヴントのあまり知られていない側面について知る機会とする。

【キーワード】
民族心理学、人類発達の精神史

執筆担当講師名:星 薫(放送大学客員准教授)
放送担当講師名:星 薫(放送大学客員准教授)

第6回 デュルケム:『道徳教育論』

フランスの哲学者、社会学者であり教育思想家でもあったエミール・デュルケムの『道徳教育論』を読み、教育事象の実証主義的な分析とその基本理念について理解する。

【キーワード】
社会学、実証主義、規範、道徳、社会的存在

執筆担当講師名:岩永 雅也(放送大学長)
放送担当講師名:岩永 雅也(放送大学長)

第7回 シュタイナー:『子どもの教育』/『教育術』

シュタイナーの『子どもの教育』および『教育術』を読み、シュタイナー学校の実践とあわせて、自主性尊重の自由主義教育について理解を深める。

【キーワード】
児童中心主義、人智学、模倣と手本、自由ヴァルドルフ学校

執筆担当講師名:岩永 雅也(放送大学長)
放送担当講師名:岩永 雅也(放送大学長)

第8回 モンテッソーリ:『子どもの発見』

モンテッソーリの『子どもの発見』を読み、モンテッソーリ主義の幼児教育実践とあわせて、特別支援教育にも関わる「感覚教育」の内容について理解する。

【キーワード】
知的障害児、モンテッソーリ教育、子どもの家、感覚教育

執筆担当講師名:岩永 雅也(放送大学長)
放送担当講師名:岩永 雅也(放送大学長)

第9回 バートレット:『想起の心理学』

1930年代に活躍したイギリスの心理学者バートレットは、科学的であることに捉われすぎていた当時の心理学の世界にあって、広い視野で人の心を眺めた研究者であった。彼の『想起の心理学』を読んで、彼の心理学に触れる。

【キーワード】
記憶、想起、図式(スキーマ)

執筆担当講師名:星 薫(放送大学客員准教授)
放送担当講師名:星 薫(放送大学客員准教授)

第10回 ピアジェ:『知能の心理学』/『思考の心理学』

独自の発達心理学を発展させた、スイスの心理学者ピアジェの心理学をピアジェ自身がコンパクトにまとめた二書『知能の心理学』と『思考の心理学』を読んで、ピアジェ心理学に親しむ。

【キーワード】
均衡、保存、操作、発生的認識論

執筆担当講師名:星 薫(放送大学客員准教授)
放送担当講師名:星 薫(放送大学客員准教授)

第11回 ハーロウ:『愛のなりたち』

ハーロウは、「愛」の問題に対して科学的に取り組んだ希有な心理学者である。彼がサルを用いて行った研究の集大成、『愛のなりたち』を読み、「愛」について考える。

【キーワード】
五つの愛情系、接触の慰撫、安全基地、探索行動

執筆担当講師名:森 津太子(放送大学教授)
放送担当講師名:森 津太子(放送大学教授)

第12回 アリエス:『<子供>の誕生-アンシァン・レジーム期の子供と家族生活』

アリエスの『<子供>の誕生-アンシァン・レジーム期の子供と家族生活』を読み、常識化した子ども観、教育観を歴史的にもう一度見直してみる機会とする。

【キーワード】
アナール学派、子ども、アンシァン・レジーム期、幼児期

執筆担当講師名:岩永 雅也(放送大学長)
放送担当講師名:岩永 雅也(放送大学長)

第13回 清水義弘:『試験』

清水義弘の『試験』を読み、戦後日本における教育社会学の形成と確立に貢献した著者の社会観、教育観に触れる。

【キーワード】
学校制度、入学試験、学歴、選抜制度、地域差と学校差

執筆担当講師名:岡崎 友典(放送大学客員准教授)
放送担当講師名:岡崎 友典(放送大学客員准教授)

第14回 土居健郎:『「甘え」の構造』/『続「甘え」の構造』

「甘え」理論の観点から日本人論の端緒となった『「甘え」の構造』『続「甘え」の構造』を読み、甘え理論、甘えの心理と病理、自分の意識、臨床実践、人間理解の方法について考える。

【キーワード】
「甘え」理論、自分、カルチャーショック、日本人論、同一化、対象関係論、臨床実践、人間理解の方法

執筆担当講師名:齋藤 高雅(放送大学名誉教授)
放送担当講師名:齋藤 高雅(放送大学名誉教授)

第15回 先人たちと現代社会

教育と心理の分野の学史について概観し、この科目で取り上げた教育と心理両分野の“先人たち”の業績を踏まえ、両分野の研究の現状と今後の課題、そして未来について展望する。

【キーワード】
心理学の現状、心理学の未来、教育学の現状、教育学の課題

執筆担当講師名:星 薫(放送大学客員准教授)
岩永 雅也(放送大学長)
放送担当講師名:齋藤 高雅(放送大学名誉教授)
岡崎 友典(放送大学客員准教授)
星 薫(放送大学客員准教授)
森 津太子(放送大学教授)
岩永 雅也(放送大学長)

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