心理学概論(’18)

心理学概論(’18)

Introduction to Psychology (’18)

主任講師名:森 津太子(放送大学教授)、向田 久美子(放送大学准教授)

【講義概要】
心理学に興味を持つ者は多いが、そのほとんどが心理学という学問について漠然とした印象しか持っておらず、また知識を持っていたとしても、特定の心理学領域についてのものに偏っていることもある。心理学は、ひとの心という捉えどころのないものを研究対象としており、それゆえに扱うトピックの幅も広い。そこで本科目は、心理学を学び始める者が、その第一歩として、心理学がどのような学問かを知り、今後、心理学のどの領域の学習を中心に進めるとしても、その基盤となるような知識を提供する。具体的には、心理学という学問の基本的な考え方や、研究方法、学問成立の背景などを紹介するとともに、個別の心理学領域についても概説していく。

【授業の目標】
心理学という学問の基本的な考え方や、研究方法、学問成立の背景などを理解するとともに、個別の心理学領域の現況を俯瞰し、心理学の学習をさらに進めていく上での基礎とする。

【履修上の留意点】
「心理と教育へのいざない(’18)」「発達科学の先人たち(’16)」を履修していることが望ましい。

各回のテーマと授業内容

第1回 心理学とは

心理学は人の心を研究する学問であるが、「心の科学」や「行動の科学」とも呼ばれている。この回では、心理学とはどのような学問か、その基本的な考え方と、成立背景について概説する。また、心理学の基礎資格である「認定心理士」の分類を参考に、心理学の諸領域について解説する。

【キーワード】
心理学の歴史、基礎心理学、応用心理学、認定心理士

執筆担当講師名:向田 久美子(放送大学准教授)
放送担当講師名:向田 久美子(放送大学准教授)
森 津太子(放送大学教授)

第2回 心理学の研究方法

人の心の働きや行動の原理を明らかにするためには、何らかの客観的な証拠に基づいて議論することが必要である。心という捉えどころがない対象に迫るために考案されてきた研究法(実験、観察、調査、面接、事例研究)について解説する。

【キーワード】
構成概念、実験、観察、調査、面接、事例研究

執筆担当講師名:向田 久美子(放送大学准教授)
放送担当講師名:向田 久美子(放送大学准教授)
ゲスト:高橋 秀明(放送大学准教授)

第3回 知覚心理学

私たちは、目、鼻、口といった感覚器官を通じて、外界からの情報を取り入れている。感覚器官で捉えられた情報は、脳に伝えられ、そこで解釈が加えられたときにはじめて知覚となる。その意味で、知覚は、私たちが考えたり、行動したりする前に生じる、ごく初期段階の心の働きということができる。知覚研究の成果を通じて、知覚という心の世界を探求する。

【キーワード】
感覚と知覚、絶対閾と弁別閾、知覚の体制化、知覚の恒常性、精神物理学

執筆担当講師名:森 津太子(放送大学教授)
放送担当講師名:森 津太子(放送大学教授)

第4回 学習心理学

私たちの日常の行動のうち、生まれつき備わっているものは僅かであり、その多くは生後のさまざまな経験を通して学習される。そうした学習が成立するメカニズムを解明しようとするのが、学習心理学である。この回では、代表的な学習理論を取り上げ、そのそれぞれが学習をどう捉えているのかについて、具体例を挙げながら解説する。また、学習心理学との関連が深い認知心理学についても、その一端に触れていく。

【キーワード】
古典条件づけ、道具的条件づけ、観察学習、洞察学習、認知心理学

執筆担当講師名:進藤 聡彦(放送大学教授)
放送担当講師名:進藤 聡彦(放送大学教授)
ゲスト:渡辺 茂(慶應義塾大学名誉教授)

第5回 生理心理学

心理学は、哲学と生理学をつなぐ学問だという見方がある。実際、心の中枢とされる脳神経系への関心は、現代心理学が誕生した当初より非常に高かった。人間の脳の活動を測定することは、ごく最近までは容易ではなかったが、それでもこれまでにさまざまな研究が行われてきた。それらの知見を解説しながら、心と脳との関係を探っていく。

【キーワード】
神経細胞(ニューロン)、脳神経系、側性化(ラテラリティ)、機能局在論、fMRI

執筆担当講師名:森 津太子(放送大学教授)
放送担当講師名:森 津太子(放送大学教授)

第6回 比較心理学

人間は、どのようにして現在のような心の働きを持ちえたのだろうか。進化論を背景に、他の動物との比較を通じて、人間の心の働きを明らかにしようとするのが比較心理学である。比較心理学の基本的な考え方と具体的な研究をもとに、ヒトという動物の心を探求していく。

【キーワード】
進化論、弁別学習、期待違反法、マークテスト(ルージュテスト)、アイ・プロジェクト、マキャベリ的知性

執筆担当講師名:森 津太子(放送大学教授)
放送担当講師名:森 津太子(放送大学教授)

第7回 教育心理学

教育心理学は、教育の多岐にわたる問題を心理学の視点から解明し、教育実践に役立てようとする研究領域である。この回では学校教育に焦点をあてて、教科の知識や技能の獲得過程や学習への動機づけに関わる問題、学級という集団のなかで子ども達が学ぶ社会性の問題などについて、教育心理学がどのようにアプローチしているのかを紹介していく。

【キーワード】
教授・学習過程、動機づけ理論、学級の特徴、社会性の獲得

執筆担当講師名:進藤 聡彦(放送大学教授)
放送担当講師名:進藤 聡彦(放送大学教授)

第8回 発達心理学

発達心理学は、人の生涯にわたる心身の変化とそれが生じるしくみを研究する学問である。発達の研究対象はかつては子どもだけであったが、現在は大人も含むようになり、発達を多次元的・多方向的に見るようになっている。この回では、発達研究の歴史、発達研究の方法、遺伝と環境、発達段階と発達課題について概説する。

【キーワード】
生涯発達、縦断と横断、遺伝と環境、発達段階、発達課題

執筆担当講師名:向田 久美子(放送大学准教授)
放送担当講師名:向田 久美子(放送大学准教授)
ゲスト:鈴木 忠(白百合女子大学教授)

第9回 臨床心理学

臨床心理学は、心理学のなかでも特に実践との結びつきが強い領域であり、心の問題を抱えている人の支援を主な目的としている。心の健康を保つことは、身体の健康の維持とともに、人の生涯にわたる課題の一つであり、その意味でも臨床心理学の果たす役割は大きい。この回では、臨床心理学の基本的な考え方、実践方法について概説する。

【キーワード】
心理アセスメント、心の病、カウンセリング、心理療法

執筆担当講師名:向田 久美子(放送大学准教授)
放送担当講師名:向田 久美子(放送大学准教授)
ゲスト:松田 英子(東洋大学教授)

第10回 パーソナリティ心理学

パーソナリティ心理学は、主に人の性格を研究する領域である。自分や他者がどのような人物であるかを知ることは、日常生活ではもちろん、進学や結婚、就職などのライフイベントにおいても重視される。この回では、古典的な理論から最新の知見に至るまで、パーソナリティの捉え方について概説する。

【キーワード】
類型論、特性論、ビッグファイブ、人-状況論争、ライフストーリー、性格検査

執筆担当講師名:向田 久美子(放送大学准教授)
放送担当講師名:向田 久美子(放送大学准教授)

第11回 社会心理学

社会心理学が明らかにした知見のなかでも、最も重要と言ってよいのが、人間の行動は、想像以上に、私たちを取り巻く環境、とりわけ社会的な状況に左右されるということである。著名な研究を紹介しながら、社会的動物である人間の心の働きについて考えていく。

【キーワード】
レヴィンの公式、社会的促進、社会的手抜き、同調、服従、基本的な帰属のエラー

執筆担当講師名:森 津太子(放送大学教授)
放送担当講師名:森 津太子(放送大学教授)

第12回 産業・組織心理学

心理学の各分野は、しばしば基礎心理学と応用心理学に大別される。産業・組織心理学は、応用心理学の代表格であり、基礎心理学の知見が、職場という現場に適用される。ここでは、産業・組織心理学の生まれた背景と、主な研究テーマについて概観していく。

【キーワード】
科学的管理法、ホーソン効果、リーダーシップ、組織コミュニケーション

執筆担当講師名:森 津太子(放送大学教授)
放送担当講師名:森 津太子(放送大学教授)

第13回 文化心理学

従来の心理学は、人の行動や心の働きの普遍性を明らかにすることを目的としてきた。一方、20世紀の終わりごろに成立した文化心理学では、心の働きや行動における文化的文脈の重要性を強調し、心と文化の相互構成的関係を追究している。この回では、文化心理学の主要な研究成果について概説する。

【キーワード】
個人主義と集団主義、相互独立的自己観と相互協調的自己観、分析的思考と包括的思考

執筆担当講師名:向田 久美子(放送大学准教授)
放送担当講師名:向田 久美子(放送大学准教授)
ゲスト:増田 貴彦(カナダ・アルバータ大学准教授)

第14回 心理統計学の役割

心理学では統計学を多用する。心を数値化し、統計的に処理することには、どのような意味があるのだろうか。このような疑問に答えつつ、心を測る物差しと心理統計学の基礎を概説する。

【キーワード】
尺度水準、記述統計、要約統計量、推測統計、母集団と標本、有意性検定

執筆担当講師名:森 津太子(放送大学教授)
放送担当講師名:森 津太子(放送大学教授)

第15回 心理学を学ぶということ

ここまでのまとめとして、改めて心理学の魅力がどこにあるのかを考え、これから先、さらに心理学を学んでいこうという人のために、学びを進めるうえでのポイントを解説していく。

【キーワード】
心理学の魅力、「心」への関心と研究アプローチ、心理学の学び方

執筆担当講師名:森 津太子(放送大学教授)
放送担当講師名:森 津太子(放送大学教授)
向田 久美子(放送大学准教授)

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