幸せは(やっぱり)お金で買えた! 「年収7万5000ドルで頭打ち」説を最新研究が覆す

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ノーベル経済学者のダニエル・カーネマンが、人の幸福度は年収7万5000ドル(約1000万円)を超えると横ばいになると提唱したのは2010年のこと。だが今回、新たな研究で、その定説を覆す結果が得られたという。

2人の学者の「敵対的共同研究」

哲学者や経済学者、社会科学者たちが長年にわたり、解を見つけようとしている1つの問いがある。

「幸せはお金で買えるのか」というものだ。

米国人のほとんどにとって、答えは「イエス」のようだ。

この結論を導き出したのは、ダニエル・カーネマンとマシュー・キリングスワースという2人の著名な研究者で、3月に「米国科学アカデミー紀要」に共同研究を発表した。その結果によれば、大半の人は稼ぎが多いほど幸せになれるという。

これまでは一般的に人は収入が多いほど幸せになるが、年収7万5000ドルを超えると幸福度は横ばいになると言われてきた。いわゆる「7万5000ドルで頭打ち」説だ。だが今回の研究結果は、その広く信じられてきた定説を覆すものになっている。

7万5000ドルの閾値(しきいち)は、ノーベル経済学賞受賞者で心理学者でもあるカーネマン自身が、2010年の研究で提唱した。

しかし2021年、幸福の研究者でペンシルベニア大学ウォートンスクールの上級研究員であるキリングスワースは、幸福度は7万5000ドルを超えても横ばいにならず、20万ドルをはるかに超える所得でも上昇し続けると発表した。

そのキリングスワースとカーネマンは今回の研究について、仲裁者の協力を得て互いの理論をぶつけ合う「敵対的共同研究」だと表現している。また、この最新研究ではインフレを調整したという。

世の中には「不幸な少数派」もいる

2人は、米国に住む18〜65歳の就業者で、世帯年収1万ドル以上の3万3391人を対象に調査を実施した。

幸福度を測定するため、参加者はキリングスワースが開発したスマートフォンアプリ「トラック・ユア・ハピネス(幸福度の追跡)」を使って自分の感情を報告するよう求められた。

キリングスワースによれば、参加者に「日常生活のなかでランダムなタイミングで繰り返しメッセージを送り、その瞬間の幸福度をリアルタイムで尋ねる」ことでデータを得た。具体的には「いまどんな気分ですか?」と尋ね、「とても悪い」から「とても良い」までの範囲で回答してもらったという。

この研究で得られた大きな結論は2つある。

1つは、年収7万5000ドルを超えても収入と幸福度の相関関係が続いていることがわかった。つまり、人はお金が多いほど幸せになれるということだ。ただし、年収50万ドル以上については実質的なデータが不足しているという。

2つ目は、世の中には「不幸な少数派」も存在することがわかった。参加者の約20%にあたる人たちは、年収10万ドルまでは収入の増加とともに幸福度が高まったが、その後は横ばいなった。

こうした人々は収入が増えても癒やされない不幸を経験している可能性が高く、研究では、失恋や死別、重度のうつ病などの例を挙げている。彼らは、ある閾値までは収入に応じて「苦しみ」や「不幸度」が軽減されるが、「それを超えるとほとんど軽減されない」という。

お金は幸せの秘訣ではないけれど

この研究結果についてキリングスワースは、「最も簡単な言い方をすれば、ほとんどの人にとって収入が多いほど幸福度が高くなることを示唆しています」と述べている。

「ただし例外は、経済的に豊かでありながら不幸せな人たちです。裕福で非常に不幸な人は、お金が増えても助けになりません」

キリングスワースは、お金がすべてというわけではなく「幸福度を決める多くの要因の1つに過ぎない」としている。「お金が幸せを手に入れる秘訣というわけではありませんが、役に立つと言えるでしょう」

この研究結果は、ソーシャルメディアでも話題になった。あるツイッターユーザーは冗談まじりにこう投稿した。

「お金で幸せが買えないという人は、どこに買い物に行けばいいのかわからないだけなんじゃないの?」
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